神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「お前ら…。…どうしたんだ?」

「そりゃこっちの台詞だよ。隊舎の裏庭から煙が上がってるから、何事かと思って来てみたら…」

「あ、そ、それはごめん…」

勝手にキャンプ場みたいな使い方してた。

良い子は真似するなよ。

火事とかじゃないから。ただ魚焼いてるだけだから。

「それよりお前ら…今日、何で制服着てるんだ?」

休日だろ?今日。

何気ない質問のつもりだったが、この質問にキュレムは眉を釣り上げた。

何やら地雷を踏んでしまったらしい。

「はぁぁぁん!?お前らはぬくぬくとお休みなのかもしれないけどな、俺達は今日、きゅう、じつ、しゅっ、きん!なの!分かる!?」

そんなスタッカートつけて言わなくても。

きゅ…休日出勤。そうだったか…。

「お前らや世間の皆様がのんびり休んでる時に、俺達は汗水垂らして働いてたの!敬え!崇めろ!褒め称えよ!」

「ご、ごめんって…」

「しかもルイーシュは大体見てるだけだから、俺が一人で働いてたの!敬え!崇めろ!褒め称えよ!」

「…分かったって」

ちょっと落ち着け。な?

「すごいすごーい。キュレム偉いね」

ベリクリーデはぺちぺちと手を叩いて、キュレムを褒め称えていた。

「ありがとうベリクリーデちゃん。君は素直な良い子だなぁ」

キュレム、ほっこり。

…そりゃ良かったな。ご苦労さん。

「…なんか俺、どさくさに紛れてディスられてません?」

ルイーシュは不満そうだった。

「…で、君ら結局、何やってんの?…天使まで来てるじゃん」

「あぁ…まぁ、ちょっとな。さっきまで、一緒に川に…」

「お?なんか作ってんの?何茹でてんの?それ」

キュレムはこちらに寄ってきて、そしておもむろに、沸騰する大鍋の中を見下ろした。

そこには、真っ赤になって茹でられる、大量のザリガニが。

「ぎゃあぁぁぁ!?」

キュレム、ガチ悲鳴。

何事かと、後ろからやって来たルイーシュもまた、大鍋を覗き込み。

「うわぁ。何やってるんですかあなた達は…?」

ルイーシュ、ガチ引き。

…ザリガニ茹でてんだよ。悪いかよ。

「何それ?何それ!?何それーっ!?」

何それ、の三乗。

「…?人の子はザリガニを知らないのか」

首を傾げるクロティルダ。

「ちげーよ!何でお前ら、ザリガニ茹でてんの!?」

「それは…。…現世のザリガニは、ナマで食べると身体に毒らしいからな」

「そういう意味じゃねーっての!」

ぺしーん、とクロティルダの背中をはたくキュレム。

「キュレムさん、相手は天使ですよ。叩いて神罰下ったらどうするんですか」

「だまらっしゃい!公共の場でザリガニ茹でてるような奴らに神罰食らったって、屁でもないわ!」

まぁ、それはそうだな。

だが、心配する必要はない。

「俺は神罰など下さない。人間に比べれば、天使である俺の命など軽いものだ。例え命を奪われたとしても、お前達に神罰など与えるものか」

背中ぶっ叩かれてんのに、クロティルダは淡々とそう答えた。

天使だろうと人間だろうと、命の重みは一緒だろ。何言ってんだ馬鹿。