神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

で、ザリガニを獲り始めてから一時間後。

「どっさり獲れたね」

「おぉ…改めて見ると凄いな…」

僅か一時間で、ベリクリーデはバケツの中にどっさりとザリガニを捕まえていた。

間違いなく、歴代最多だな。

まぁ、それだけこの川に、ザリガニが多いってことなんだろうけど…。

「これなら、三人でたくさん食べられるね!」

「…。…マジで食うの…?」

いや、元々ザリガニは食用だったらしいって、知識では知ってるけど。

実際、俺も何度か食べたことがある。…ルーデュニア聖王国ではない別の国で、だが。

まぁここの川水は綺麗そうだから、ちゃんと火を通せば、そんなに危険なことはないだろう。…多分。

…つーかベリクリーデ、今、三人で、って言ったけど。

「…クロティルダのヤツ、何処に行ったんだ?」

俺はこのタイミングでようやく、クロティルダの姿が見えないことに気づいた。

この川に来る時までは、確かに一緒にいたよな?

ザリガニ獲りをしている間に、どっか行ったんだけど。

ベリクリーデのことはちゃんと見ていた俺だが、クロティルダまで面倒見るつもりはないぞ。

…あいつ、何処に消えた?

天界に帰ったのか?…まさか川に流された訳じゃないよな…?

まぁ、流されたとしても…天使だから大丈夫だと思うけど…。

…川で流される天使って、一体。

「クロッティ?クロッティなら、あっちにいるよ」

「え?」

ベリクリーデは、川上の方を指差した。

「呼びに行こっか。ザリガニ、いっぱい獲れたし」

「あ、あぁ…そうだな…」

ベリクリーデについていって、バケツを持ってしばらく川上に向かって歩くと…。

「クロッティ〜!来たよ」

「…ん?…あぁ、お前達か」

「お前…。…何してるんだ?」

クロティルダは川辺に腰を下ろして、川の中に釣り糸を垂らしていた。

…呑気に川釣り楽しんでんだけど。

心配して損した。

「見ての通り、釣りだ」

「あっそ…。…なんか釣れたのか?」

「まぁ、そこそこと言ったところだ」

「ふーん…」

川で釣れるもの…。…フナとか…コイ、ナマズとか?

「わーい。お魚がいっぱいいるよ」

ベリクリーデは、クロティルダの傍らに置いてあるバケツを覗き込んで、歓声をあげた。

「これ、何のお魚なの?」

「アユだな」

えっ、あ、あゆ?

俺は、驚いてバケツを覗き込んだ。

すると。

バケツの中では、まるまると太った立派なアユが何匹も、悠々と泳いでいるではないか。

嘘だろ…!?

「お前、これどうしたんだよ…!?」

「?…釣った」

ど、どうやって?

ここ、アユが釣れる川なのか?

つーか、そんなに簡単に釣れる魚じゃないよな…!?

「おまっ…ど、どう…」

「あ、また釣れた」

「わー、クロティルダ、すごーい!」

クロティルダが釣り竿を引き上げると、その先に一匹のアユがかかっていた。

…やべぇ。マジで釣ってる。