神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

やっぱり川と言えば、ザリガニ獲りだろ。

…え?そんなことはないだろ、って?

まぁそうなんだけど。…小さい頃やらなかったか?ザリガニ獲り。

「ジュリス、ここ?」

「そうそう、その辺だ。慌てずにな、そーっと」

「うん、分かった」

じゃぼ、じゃぼ、と川の中を掻き分けて歩くベリクリーデは。

川辺りの草むらの隙間に、網を差し込み。

ひょいっ、とすくい上げると。

「…!ジュリス、これ見て、これ」

「おぉ、いるいる」

ベリクリーデがすくい上げた網の中に、ザリガニが入っている。

しかも一匹じゃない。そこそこの大きさのザリガニが、三匹も入っている。

「ベリクリーデ、お前なかなか筋が良いな…」

「えっへん」

ザリガニ獲りでドヤる女、ベリクリーデ。

…まぁ、何でも特技があるってのは良いことだよ。

「ほら、ジュリスも」

「え、お、俺?」

「一緒に捕まえよ」

「お、おぉ…」

…分かったよ。

えぇと…ザリガニは夜行性だから、昼間は草むらとか、岩の下に潜んでいることが多い。

川底の石を退けて、その下に生き物を探す。

おぉ、いるいる。

ザリガニだけじゃなくて、サワガニや、ちっちゃいナマズみたいな魚が。

結構綺麗な川なんだよな。ここ。

それに、涼しい。

暑くて、とても外になんか出られないと思ってたけど。

ここの川は山からの湧き水が流れているからだろう。川の水が冷たくて、とても心地良い。

この辺は、流れはちょっと速いけど、そんなに深くなくて、足首くらいの水深しかない。

これなら、すっ転んでも流されたりはしないだろう。

それでも油断は出来ないから、とりあえず、ベリクリーデからは目を離さないでおく。

「あっちにもいるかな」

人生初めてのザリガニ獲りを楽しむベリクリーデ。

さっきまで、浮き輪で遊べないことにしょんぼりしていたのに。

今では、すっかり川遊びに夢中である。

すげー元気になってんじゃん。

楽しそうで何より。

かく言う俺も、ちょっと童心に帰って楽しんでたりもする。

川遊びで心が躍らない男は、(あんまり)いない。

「ジュリス、見て見てー」

「おぉー…。…凄いな」

ベリクリーデは、またしても網の中にザリガニを捕まえていた。

絶好調だな、ベリクリーデ。

この川にいるザリガニ、全部ベリクリーデが一掃するんじゃね?

ザリガニと言っても…この川にいるのは外来種のようだが。

まぁ、ザリガニなら何でも良いよ。

「見て。また捕まえた」

「お、おぉ…。…本当に絶好調だな」

「まだまだだよ。もっともっと捕まえなきゃ」

「いや、別に…。捕まえなきゃいけないことはないだろ」

「だって、三人で食べるんだから、三人分獲らなきゃ」

…え。

…ベリクリーデ、お前それ…。…食うつもりなのか?

川の中に立ち尽くして、呆然としていると。

「…?ジュリス、どうしたの?」

「…えっ?い、いや…」

「うーん。あっちにもいる気がするなー」

「あっ…。こら、勝手に移動するんじゃない」

じゃぶじゃぶと水を掻き分けていくベリクリーデを、俺は後ろから追いかけた。