神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

この暑さだったのに、ベリクリーデの元気は変わらないなぁ。

羨ましいくらいだよ。

「ジュリス、これしてあそぼ」

今日のベリクリーデは、何やら玩具を持ってきていた。

…何だそれ?

「ベリクリーデ、何だこれ?」

「風船なの」

…風船?

「なかなかいっぱいにならないの」

ベリクリーデは、口をつけて一生懸命、息を吹き込んでいた。

…あれが風船…?

いや、そんな風には…。

「ふー、ふー」

何やら一生懸命吹き込んでるが。

全然膨らんでないぞ。

つーかそれ、そもそも風船じゃなくて。

「…ベリクリーデ、それ浮き輪じゃね?」

「ふぇっ?」

どう見ても風船じゃない。…浮き輪だ。

大人用の、でっかい浮き輪。

…なんでそんなものが?

「どうしたんだ?それ…何処から拾ってきた?」

「商店街を歩いてたら、これもらったの」

ベリクリーデは、1枚の紙切れを差し出した。

…それは、商店街で配っている無料福引きの券だった。

成程。福引き。

「ガラガラして良いよって言われたから、ガラガラしたの」

「…で、何が出たんだ?」

「赤い玉が出たの」

…当たりじゃん。

こういうところ、無駄に運良いよな…ベリクリーデは。

「おめでとうございますって、言われてこれもらったの」

…成程。福引きの景品だったんだな。

夏だからな。夏っぽいものの景品を用意したんだろう。

「これなーに?って聞いたら、膨らませて遊ぶものなんだって」

「まぁ…浮き輪だからな」

「きっと、ふーふーして遊ぶものなんだよ。だから一生懸命膨らませてるんだけど…」

「…」

「…膨らまないね」

…そりゃ、ふーふーして膨らませるものじゃないからな。浮き輪は。

子供用の小さな浮き輪ならまだしも、大人用の浮き輪なら、専用のエアーポンプがないと。

「だから、ジュリスも一緒にやろう」

「…いや、だから…。…そりゃ無理だって」

「みんなでやれば、きっと膨らむよね。よし、クロッティ〜!」

「あ、おい、コラ!」

「…俺を呼んだか、我が姫」

…来やがった。

「今日は何をやってるんだ?我が姫」

「これ、ふーふーして膨らませるの。クロティルダも一緒にやろう」

「成程。ラッパを吹くのは俺の本職だ。やってみよう」

で、ベリクリーデと一緒に、浮き輪を膨らませ始めた。

…こいつら、丸一日かけて浮き輪を膨らませるつもりか?

酸欠になるわ。

「…ったく、このアホ共は…」

…仕方がない。

クロティルダは知ったことじゃないが、ベリクリーデが酸欠になったら可哀想だ。

「ふー、ふー…。…あれ?何だか頭がふわふわしてきた…」

ほら。言わんこっちゃない。

早くも、酸欠の症状が出始めている。

「…分かった。ちょっと待ってろ」

「ふぇ?」

「エアーポンプ、買ってくるから」

結局、こんなことで外に出なきゃいけないんじゃん。