神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

なんてことだ。

引き出しの中に、後生大事にチョコをしまっとくから…!

黒光りするゴキブ、いや、Gが引き出しの中に侵入していたようだ。

しかもこいつ…かなりデカいぞ。

Lサイズ、どころかLLサイズのG。

引き出しなんかにチョコを入れるからだ!と叱りたいところだが、後の祭り。

シルナが青ざめたのは、こいつのせいか。

そのGは、カサカサカサ、と床を這っていた。

「動いてる!動いてる〜っ!!」

そりゃ動くだろ。

しかも。

Gは情けないシルナを見て、こいつならやれる、と思ったのか。

あろうことか、シルナの足元に向かってカサカサ、と近づいてきた。

「ぴやぁぁぁぁっ!?」

シルナは悲鳴を上げながら、何故か俺にしがみついてきた。

「ちょ、なんで俺にくっつくんだよ!?」

「来てるーっ!!助けてぇぇぇ!」

シルナ、ガチ泣き。

良い歳して、Gにビビる学院長、シルナ。

情けないことこの上ないが、かくなる上は。

俺がなんとかするしかない。

「く、くそっ…!殺虫剤は何処だ…!?」

肝心な時に見つからないモノあるある、殺虫剤。

普段滅多に使わないから、何処かに仕舞い込んでしまって見つからない。

「いやーっ!!無理、無理無理無理!」

叫ぶシルナ。うるせぇ。

だが、気持ちは分かる。

俺だって、自慢じゃないがGは苦手だ。

出来れば一生出会いたくない。つーか得意な人もあんまいないだろ。

いや待て。このイーニシュフェルト魔導学院は、頼もしい仲間達がいる。

情けないシルナや俺と違って、G相手でもへこたれない仲間達が。

「令月とすぐりは…!?」

元暗殺者であるあいつらなら、Gごときでは怯まないはず。

しかし。

「今、授業中だから無理だよぅ」

と、泣きじゃくりながら答えるシルナ。

そうだった。今は授業の真っ最中なんだった。

さすがに、授業中なのに、G退治の為にあの二人を呼び出す訳にはいかなかった。

「じゃあナジュは…!?」

「えぐっ、えぐっ…。今は4年生の実技授業の時間だと思う…」

それなら仕方ない。

「それなら天音…と言いたいところだが、天音もGは苦手そうだな…」

「天音君優しいから、虫は殺せないんじゃないかなぁ」

だよな。

それが例えGだとしても、殺さずに逃がしてあげることを考えそうだ。

ならば。

「そうだ、マシュリは…!?あいつ猫だから、G退治は得意なんじゃ、」

「うぅ…。わ、私もそう思ったけど…確か今、マシュリ君は…」

「…何処だよ?」

「今日…町内合同猫集会の日だって…」

畜生。こんな時に限って。

町内の野良猫達に混ざって、にゃーにゃー会話してるマシュリの姿を想像した。

頼もしい仲間達のはずなのに、肝心な時に頼れる仲間が一人もいない。

「ってことは、やっぱり俺がやるしかないのか…!?」

「羽久助けてぇぇぇぇ」

一世一代の大勝負。俺VS、G。

傍から見ると凄く下らないのだろうが、俺達は至って真剣だった。