神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「ど…どうしたんだ?一体…」

大事なんじゃないのか、そのチョコ。

イレースにバレたら叱られるレベルに高級なんだろ?

そんなチョコを落っことすなんて、お前…。

しかしシルナは、チョコを拾い上げることはせず。

代わりに、急いで引き出しを閉めた。バンッ、と勢いよく。

そして、その顔は青ざめていた。

「…ど、どうした…?」

「…ぶるぶる…」

「…」

なんか、急に震え出したんだけど。

…本当にどうしたんだ?

「み、み、見てない…。私は何も見てない…」

…ぶつぶつ呟いてるし。

「きっと今のは見間違いだ…。そうに違いない…」

「シルナ…。お前、何言ってるんだ…?」

「気の所為だ…。気の所為なんだ…」

返事をしてくれって。

一体何がどうなったって言うんだ?チョコ、食べないのか。

さっきまでご機嫌だったシルナは、今はもうチョコどころじゃないようだった。

…?

「…引き出しの中に何かあったのか?」

俺はおもむろに、さっきシルナが閉めたシルナの鍵付きの引き出しを開いた。

「あ、は、羽久!今は駄目!」

「え?」

慌ててシルナが止めたが、遅かった。

引き出しを開けた瞬間、黒い何かが、ポトッ、と床に落ちた。

…何だ?今の。

「ひゃうーっ!?」

奇声をあげるシルナ。

驚いて、床に視線を落とすと。

…確かに、そこにいた。

長い触覚。黒光りする羽。

床に落ちた「それ」は、カサカサカサ、と我が物顔で床を這った。

こ、こいつは。

「ゴ…、ゴキ●リ…!?」

「いやぁぁぁ!言わないで羽久ぇぇ!」

シルナは、悲痛な声で叫びをあげた。