神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

よくよく、その本を見せてもらうと。

後書きの部分に、シルナに対する謝意も述べられていた。

私がここまで来られたのは、支えてくれた全ての皆さんと。

そして、イーニシュフェルト魔導学院で私を指導してくれたシルナ・エインリー学院長先生のお陰です、みたいな。

これは嬉しい。

シルナじゃなくても、教え子にこんなことを言われたら誇らしい気持ちにもなるよ。

「ねっ、羽久。嬉しいでしょ?ねっ?」

「はいはい、そうだな」

分かった、分かったから。

その少年みたいなキラキラした目、やめろ。

「だから今日は記念として、いつもより美味しいチョコを食べようと思うんだ!」

…なんか言い出したぞ。

にっこにこのシルナは、普段鍵をかけているデスクの引き出しに手をかけた。

「ふっふっふ。羽久には内緒にしてたけどね、ここの引き出しには、普段はなかなか食べられない、高級チョコが入ってるんだよ」

「いや…別に、知ってるけど…」

何年お前と付き合ってると思ってるんだ?

お前のチョコの隠し場所くらい、秘密にされなくても知ってるよ。

「イレースちゃんには内緒だよ。バレたら怒られるから」

「…イレースも知ってると思うけどな…」

「そんな訳だから、今日はお祝いだよ。美味しい高級チョコ、一緒に食べよう!」

と言って、シルナは秘められし引き出しの鍵を開けた。

「さ〜て、どれにしようかな〜?」

「どれでも良いだろ…」

「よしっ、じゃあ…とびきり高級な、このキャラメルプラリネにしよう!」

シルナは、いかにも高級そうな、チョコレートの入った黒い小箱を手に取った。

本当に高級なチョコレートってさ、あの小さな小箱に3、4粒くらいしか入ってないのに。

それだけで、何千円もするんだよ。凄いよな。

そんな高級なチョコレート、自転車操業学院のシルナの給料じゃ、なかなか手が出ない。

だからこそ、買える時に買って、こうして引き出しの中で大事に温め。

記念日の時だけ、少しずつ大事に食べている訳だが…。

その時。

うっきうきだったシルナの顔が、一瞬にして引き攣った。

「…ひぇっ!?」

「はっ?」

シルナが、キャラメルプラリネの小箱を床に落っことした。

な…。…何やってんだ?