神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

―――――…その日、シルナはとてもご機嫌だった。

大抵いつでもヘラヘラしているシルナだが、今日はいつにも増して、超ご機嫌。

「あのね羽久。今日、すごーく良いことがあったんだよ」

…とのこと。

気持ち悪いくらい良い笑顔。

…その表情からして、内心「聞いて聞いて」と思っているのは明白だった。

構ってちゃんかよ。

「羽久が私に失礼なこと考えてる気がするなぁ…」

「そうだな」

「でも今は、良いことがあったから気にならないや!」

あっそ。それは良かったな。

だが、俺はシルナの構ってちゃんに付き合う気はないので。

「…それじゃ、俺は職員室に戻るよ」

敢えてシルナを無視して、職員室に戻って仕事の続きをすることにした。

しかし、立ち去ろうとする俺を、シルナが羽交い締めにして止めた。

畜生。捕まった。

「ちょっと待って、羽久!話を聞いて!話を!」

「離せ!俺は構ってちゃんに付き合う趣味はねぇ!」

「お願いだからぁぁ!羽久にも関係があることなんだよ!本当に!」

何だと?

「…本当だろうな?」

そんなこと言って、俺に関係のない話をしたら承知しないからな。

もうシルナの言うこと信用しないから。

「本当、本当だって」

「よし。じゃあ言ってみろ」

「ほら。じゃーん!この本見て」

本?

シルナは、真新しい新品の本を見せつけてきた。

タイトルは、『医療の現場で実践する回復魔法』…とのこと。

…何だ?この本。

「…この本がどうかしたのか?」

「著者を見て、著者を」

「著者…?…あ」

シルナが何を言いたいのか、ようやく分かった。

その本の著者の名前は、ラミーネ・フェルオン。

実はこの子、10年くらい前に卒業したイーニシュフェルト魔導学院の卒業生なのである。