神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

更に、他にも。

「見てー。秋のこーよーツアーだって」

こーよー、って…。…紅葉のことか?

これも定番のツアーだよな。

でも紅葉とか花見のツアーって、タイミングがシビアなんだよな。

この時期なら!と思って行ってみたら、紅葉がまだ始まってなかったり。

じゃあもう少しズラして行ってみるか、と思ったら、とっくに葉が散っていたり。

紅葉真っ盛りの、最高の瞬間にツアーの日が重なることって、結構稀だと思う。

まぁこればかりは。お天道様のご機嫌次第だから。

「こーよー見に行こーよー、なんちゃって」

ベリクリーデは、何故かドヤ顔だった。

あーはいはい。面白い、面白いねー。

「…?」

クロティルダには全然通じていなかった。ドンマイ。

しかし、ベリクリーデはまったく堪えていないようで。

「見て。こっちも面白そうだよ。なんだかキラキラしてる」

…キラキラ?

「えぇっと…ほら、えるみんしょーねん、だって」

何それ。

そんな観光地があるのかと、俺はベリクリーデの背後から、ツアーのパンフレットを覗き見。

そして、ベリクリーデが何のことを言っているのか理解した。

「…イルミネーションだ、ベリクリーデ。イルミネーション」

「ほぇ?…いるみんしょーねん?」

「イルミネーションだって…」

よく読みなさい。まったく。

そうか…紅葉の時期の後は、今度はイルミネーションの時期になるもんな。

ベリクリーデは、紅葉よりもイルミネーションの方が好きそうだ。

「キラキラしてて綺麗だね」

「そうだな…。そんなにキラキラしているのが好きなら、今度メイカイキラキラ鉱山にでも連れて行ってやろう」

「やったー」

おいクロティルダ。勝手にベリクリーデを冥界旅行に連れて行くな。

更に。

ベリクリーデは、他のツアーを指差した。

「こっちはなーに?これもいるみんねーしょん?」

「豪華客船クルーズの旅、と書いてあるな」

あぁ、クルーズな…。これも定番だよな。

人生で一度は乗ってみたいものだが、なかなかハードルが高いんだよな。クルーズ旅行。

船に乗って世界一周、とかさ。

だけど最近は、そんな何日も船に乗って旅行するのではなく。

海を眺めながらランチを楽しむだけ、という日帰りクルーズとか。

一泊二日くらいの短いクルーズとか、そういう気軽に足を運べるクルーズツアーもあるらしい。

へぇ。面白そうだな。

ツアー料金も、べらぼうに高い訳ではない。

最近は割とリーズナブルになってるんだな。と、感心してしまった。

…感心してる場合かよ。

するとベリクリーデが、とあるツアーを指差した。

「見てジュリス。これ面白そうだよ」

「は?何?」

「豪華客船『ホワイト・ドリームⅡ号』ツアーだって」

「…何処かで聞いたことのある名前だな…」

「『白亜の塔』っていう展望台が名物なんだって。楽しそうだね」

「やめておけ。この船だけはやめておけ」

悪いことは言わんから。絶対ろくな目に遭わんから。

…え?何でだ、って?

…駄目なものは駄目なんだよ。年長者の言うことは素直に聞いておけ。

「じゃあ、ジュリスは何処に旅行に行きたいの?」

え、俺?

「そうだな…。俺は別に…」

「冥界なら、俺が案内するが」

「それは絶対に御免だ」

誰がお前と旅行に行くか。あと冥界なんて二度と嫌だ。

「…まぁ、うん。何処でも良いよ別に」

「そっか。今度一緒に行こうね」

「はいはい」

と、俺は生返事で済ませたのだった。








END