神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「…」

ノックもせずに入ってきたベリクリーデを、俺はじっと見つめた。

「…?」

きょとん、と首を傾げるベリクリーデ。

…この間抜けな顔よ。

お前な…俺はもう慣れてるから別に良いけど。

「…お前、俺以外の男の前で、そんな無防備な顔をするなよ」

「ほぇ?むぼーび?」

「ほぇ、じゃくてな…」

…あぁ、もう良い。

今度、防犯ブザーとか買ってこようかな…。ベリクリーデに持たせておけば、少しは…。

いや無理だな。危機感ってものがないんだもん。こいつ。

結局、俺が気をつけて、目を光らせておかなければならない訳だ。

畜生。

しかしベリクリーデは、俺の心配なんてまったく気づかないで。

「ジュリス。あそぼ」

目をキラキラさせておねだり。

「俺は忙しいんだ。一人で遊んでろ。つーかお前も仕事しろ」と言いたいところだが。

そこでそれを言うと、ベリクリーデは露骨にしょぼーんとして。

何故か、正論を言ったはずの俺の方が、罪悪感を煽られる結果となるのだ。

ということを、俺は経験則で知っている。

そこで。

「…分かった。でも、今は忙しいから、しばらくの間一人で遊んでてくれるか?この仕事が終わったら相手してやるから」

俺は、3歳くらいの子供をあやすかのような口調でそう言った。

するとベリクリーデは、目を輝かせ。

「うん、分かった」

と言って、大人しくその場に座った。

こういうとこ、凄く素直なんだよな。

意外に思うだろ?

欲望に忠実過ぎるのは玉に瑕だが、決して我儘ではないんだよ。

「〇〇だから大人しく〇〇しててね」と言えば、素直に言うことを聞く。

俺、本当ベリクリーデの扱いが上手くなってきたなぁ。

しみじみ。

…って、俺は親かよ。

「まいごのまいごのジュリスちゃんー♪あなたのおうちは何処ですかー♪」

…なんか歌い始めてるし。

おい。誰が迷子だよ。勝手な替え歌はやめろ。

「なーいてばかりいるジュリスちゃん〜♪」

「…泣かねーよ」

「い、ぬ、の〜おまわりさん♪困ってしまってにゃんにゃんにゃにゃーん♪」

「それは猫だ」

もうめちゃくちゃだよ。

これ以上ベリクリーデが変な歌を歌う前に、早く仕事、終わらせよう。