神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

と、いう訳で。

俺はベリクリーデとクロティルダを連れて、近所のラーメン屋にやって来た。

お昼時をちょっと過ぎてしまったが、そのお陰か、店内はやや空いていた。

この店、お昼に来ると、大抵混んでて席待ちしなきゃいけないからさ。

今日は、待たずに座れてラッキーだったな。

「ほぇぇ〜」

初めてのラーメン屋に、好奇心を抑えられないらしいベリクリーデ。

店内をきょろきょろ見渡している。

大人しくしてろよ。今は客が少ないとはいえ、公共の場なんだから。

「ねぇジュリス、ここ何食べるところなの?」

「ラーメンに決まってるだろ」

ラーメン屋なんだから。

「オムライスはないの?」

「…ねーよ…」

「そっかー」

天津飯ならあると思うぞ。

でも、折角生まれて初めてラーメン屋に来たんだから。

ラーメン食べろよ。

カウンター席に並んで腰掛けると、店員さんがお冷やを持ってきてくれた。

どうも。

さて…それじゃメニューを見るとするか。

「見て見て、クロッティ。これ何だろう。お箸かな?」

「随分と小さな箸だな」

ベリクリーデが指差した、テーブルの上には。

ケースの中にギッチギチに入った、爪楊枝。

…。何が箸だって?

「これで食べるの?…何だか難しそう…」

当たり前だよ。どうやって爪楊枝で麺を啜るんだ。

「ラーメンというのはきっと、この極小の箸を扱える選ばれし人間にしか食べられない、高級食材なんだろう」

「なるほどー」

おい馬鹿天使。ベリクリーデに勝手なことを教えるんじゃねぇ。

それはラーメンを食べ終わった後、歯の隙間に挟まった食べ物のカスを取る為の…。

…あぁ、もう好きに思わせておこう。

「…それよりお前ら、早くメニューを決めろよ」

「ほぇ?」

「ほら、これ」

俺は、テーブルの上に置いてあるメニュー表を広げた。

ここのラーメン屋は、メニューが非常に豊富である。

「わー。いっぱいあるね」

「だろ?醤油ラーメン、みそラーメン、豚骨ラーメン…。何でも好きなのを選ぶと良い」

俺は…。…今日はみそラーメンの気分かな。

それに、餃子をつけようかな。

しかしベリクリーデは、それぞれのラーメンの種類が分からなかったようで。

「…しょうゆ?みそ?…ねぇクロッティ、それってどう違うのかな」

「そうだな…。俺も食べたことがないから、想像だが」

「うん」

「醤油ラーメンというからには、きっと、醤油にラーメンなるものを浸した食べ物なんだろう」

「しょっぱそうだねー」

違うっつーの。醤油で味付けしたラーメンのことだよ。

麺にそのまま醤油をドボドボかけた食べ物だと思ってやがる。

「じゃあ、みそラーメン、っていうのは?みそってなーに?」

「カニの中身のことだ」

それはカニミソ。

「じゃあ、豚骨ラーメン、っていうのは?」

「豚の骨がトッピングされてるんじゃないか?」

「…豚さんの骨…。硬くて、あんまり美味しくなさそう…」

…豚骨で出汁を取ったスープで作った、ラーメンのことだよ。

「何だか、どれもあんまり美味しそうじゃないね…」

クロティルダお前、ラーメン屋さんに謝れ。

適当なことばっか言いやがってよ…。