神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

折角さぁ…食品会社の人が、美味しいスープと美味しい麺を開発してくれてるのに。

こいつら、さっきからカップ麺に対する侮辱が凄まじい。

謝れ、カップラーメンに。

「そっちの袋はなぁに?」

粉末スープじゃない方の、もう一つの袋を指差した。

「どれ…。…かやく、と書いてあるな」

「かやく?」

「…爆弾だな」

「ばくだんっ!?」

…この、バカ共は。

「何故こんな危険なものが…食べ物の中に混入しているのか」

「きっと、いぶつこんにゅー、って奴だよ」

「成程。気づいて良かったな」

そのカップ麺、開発した人に謝れ。

かやくってそういう意味じゃないから。定番のボケをかましてんじゃねぇ。

「これ、本当に食べても大丈夫なのかなぁ?」

さっきまで齧りついていた硬い麺を、不安げに見つめるベリクリーデ。

気づけ。食べ方が間違ってるんだ。

すると、クロティルダが。

「多分大丈夫だ」

「え、なんで?」

「その食べ物、そこはかとなく冥界で見かけるメイカイカチカチミミズに似ているから」

思わず噴き出すところだった。

ミミズだと?

「そうなの?そのミミズ、美味しいの?」

「食感は硬いが、ちゃんと食用にされている。大丈夫だ」

「そっかー。じゃあ安心だね」

何でその説明で、安心出来るんだよ。

で、またベリクリーデは、バリッ、ボリッ、とそのまま麺を齧っていた。

…駄目だ、こりゃ。

こいつら…カップラーメンという食べ物を、と言うか、ラーメンという食べ物が何であるかを、まったく分かっていない。

あろうことが…カップラーメンが、勝手にミミズ扱いに…。

これはカップ麺に対する風評被害だ。

「…はぁー…」

俺は、大きく溜め息をついた。

さっきまで、このバカ共二人を好き勝手させていたが。

さすがに、もう黙っていられなくなってきた。

…まぁ元はと言えば、俺がベリクリーデを放置したのが原因だし。

って、俺は悪くないけどな。

でも…丁度、仕事も目処がついてきたところだったから。

「…ベリクリーデ」

「ふぇ?」

ベリクリーデは、硬いままの麺をガジガジと前歯で齧りながら、こちらを向いた。

…それ食べるのやめなさい。歯が痛くなるぞ。

「お前、もしかして…いや、もしかしなくても…ラーメン食べたことないだろ」

「らあめん?…らあめん、らあめん…。…食べたことくらいあるよ?」

ほう?

「じゃあ、どういう食べ物か説明してみろ」

「えぇっと…。…。ケチャップかけて食べたら美味しいよね!」

オムライスじゃないんだぞ。バカちん。

やっぱり、全然分かってないじゃないか。

「クロティルダ。らあめん、って知ってる?」

「らあめん、ラーメン…。…新種の綿のことか?」

らあ綿(めん)ってか。ちげーよ馬鹿。ふざけんな。

「ったく…。…それじゃあ、ラーメン食べに連れてってやるよ」

「えっ、ジュリス、ワタを食べるの?」

「…ワタじゃねぇよ…」

お前らの、その致命的で破壊的な誤解を解こうとしてるんだよ。

その為には、やはり、実際にその目で見て、食べてみるのが一番だろう。