神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…と、思っていたのも束の間。

「じゅりすー」

「うわっ」

キュレムに連れられて、部屋を出ていったはずのベリクリーデが。

僅か10分足らずで戻ってきた。

え?今の間に昼飯食ってきたのか?

いくら何でも早過ぎるよな?

すると。

ベリクリーデは、両手に何かを持っていた。

「ジュリス、見て見て」

「…何だよ?」

「これ、キュレムにもらったの。ジュリスと一緒に食べたら良いよ、って」

ベリクリーデが見せてくれたのは、カップ麺だった。

お湯と粉末スープを入れたら出来る、カップラーメン。

お昼ご飯の定番だな。

「これなら食堂に行かなくても、ジュリスのお部屋で一緒に食べられる、って」

「…あ、そう…」

まぁ…そうだけど。

その為にキュレムの奴、備蓄のカップ麺を分けてくれたのだろうか。

ありがとう。今度お礼するよ。

「…別にそこまでしなくても、一人で生姜焼き食べてくれば良いのに…」

「ふぇ?」

「いや、何でもない…」

そんな…意地でも一緒に食べる必要、ある?

まぁ、ベリクリーデがそれで良いなら良いけど。

…問題は。

「ねぇジュリス」

「何だよ?」

「これ、どうやって食べるの?」

「…」

カップ麺の食べ方を、まったく理解していないことであった。

…カップ麺食べたことない奴って、いるの?

誰でも一度や二度は食べたことあるだろ。

カップ麺を食べたことがないなんて…何処のお嬢様育ちだよ。

え?添加物まみれで、身体に悪いだろう、って?

良いだろ。たまには。

突然、ファーストフードのハンバーガーとか、スナック菓子とか、カップ麺とか。そういうジャンクな味を身体が欲することって、ない?

何だか無性にハンバーガー屋のフライドポテトが食べたい!って思うこととか。

俺はある。

たまには必要なんだよ。そういう食べ物も。

しかしベリクリーデは、カップ麺の食べ方が分からないらしい。

「うーん。これどうやって食べるのかな?」

などと、首を傾げながら、カップ麺を逆さにしたり、揺すったり。

蓋開けて、粉末スープを入れて、お湯を注ぐんだよ。

書いてあるだろ。パッケージの蓋に…。

しかし。

「しゃかしゃか…。見て、マラカスみたい」

「…」

カップ麺をシャカシャカ振って遊んでいた。

あー、もう…。

俺が暇だったなら、「食べ物で遊ぶんじゃない」とか、「お湯入れてくるから待ってろ」とか言うんだろうけど。

良いか。俺は、今忙しいんだ。

仕事中なんだよ。月末の仕事が立て込んでるの。

すなわち、ベリクリーデを構っている暇はない。

もう放っといて、好きにさせておこう。

「ねぇねぇジュリス。教えて」

「何だよ、もう…。俺は今忙しいんだ。他の奴に聞けよ」

と、言ってしまったのが運の尽きだった。

「うん、分かった。クロッティ〜!」

しまった。

あろうことか。

「俺を呼んだか、我が姫」

…カップ麺を作る為だけに、天使を召喚しやがった。