神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

何と表現したら良いものか。

この学校は、不思議な場所だな。

授業中、俺はイーニシュフェルト魔導学院の校舎内を、ふわふわと漂うようにして観察していた。

かのイーニシュフェルトの聖賢者が創った学校…。

もっと荘厳な雰囲気の学校だと。

国内から選ばれた、よりすぐりのエリート達が。

日夜、同級生を蹴落とし、自らがのし上がることしか考えていない…。

…そんな生徒ばかりだと思っていたのに。




「あれ?今日のいろりの餌当番、ウチのクラスじゃなかった?」

「今日じゃないって。明日だよ」

…とか。

「今日の昼休み、明日の小テストの勉強しに、図書館に行こうよ」

「良いよ。イレース先生の小テストって難しいもんねー」

「赤点だと大目玉だもんね…」

…とか。

「ねぇ、今日の放課後、学院長先生のところにおやつ食べに行こうよ」

「さんせーい」

…とか。

生徒達の間で交わされるのは、そんな気の抜けるような会話ばかりなのだ。

…学院長先生のところのおやつ、っていうのは何なんだ。

シルナ・エインリーは、副業で駄菓子屋でも営んでいるのだろうか。

などと考えながら。

俺は、ふわふわと校舎内を漂う。

いつも、生贄達の日常を観察するように。

シルナ・エインリー達の日常を、自分の目で観察する。

職員室、講堂、運動場、教室内など、一通り、校舎内をぐるりと歩き回って。

結論を先延ばしにした俺は、一度、イーニシュフェルト魔導学院を後にした。







(もしかしたら)続く