神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

次は、中庭に向かった。

そこにも、生徒達が集まっていたからだ。

一体、中庭に何の用かと思ったら…。





「いろりちゃーん。おはよー」

「にゃー」

「おー、いろり。今日も元気だなー」

「にゃー」

「放課後、また遊ぼうね〜」

「にゃー」

…この声。

そっ、と生徒の背後から覗いてみると。

銀色の毛並みをした一匹の猫が、ちょこんと座って尻尾を振っていた。

…猫だ。

…猫に見えるが、アレはケルベロスだ。

そして神竜だ。

我が主である智天使ケルビムが、始末しようとした…。

でも、冥界に封印されていた7つ目の心臓を仲間達が取りに行ったことで、この世に生き返った。

名前は…マシュリ・カティアだったか。

そのマシュリ・カティアが、猫の姿をして、生徒を前に尻尾を振っている。

その姿は、愛想の良い猫、そのもの。

生徒達に頭や背中を撫でられ、気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らしている。

…あれが冥界の竜だとは、誰も思うまいな。

冥界の生き物は、現世では非常に「生きにくい」はずだ。

ましてや彼は、7つ目の心臓の封印を解いてもらった件で、シルナ・エインリーに借りがある。

その借りを返すまで、シルナ・エインリーにこき使われているのかと思ったが…。

「よしよし、いろりちゃん可愛いねー」

「にゃーん」

ゴロゴロと喉を鳴らすマシュリ・カティアは、とても、酷使されているように見えない。

…普通にくつろいでいる。

これが…冥界の神竜の姿…。

…まぁ、現実というのはこういうものなのかもしれない。