神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…で、それはまぁ良いんだけど。

「シュニィ、どうしたんだ?今日は…」

「あ…そうでした」

ベリクリーデ特製の松ぼっくりツリーを受け取ったシュニィが、こちらを振り向いた。

「実は折り入って、ジュリスさんにお願いしたいことがありまして…」

「ほう?」

「こちらなんですけど…」

と、シュニィが持ってきた書類を俺に手渡すと。

ついさっきまで、松ぼっくりに夢中になっていたはずのベリクリーデが。

その松ぼっくりを放り出して、しゅばっ、と俺の背中にくっついてきた。

「な、何だよ?」

「…じー…」

ベリクリーデまで、その書類をガン見。

…まぁ良いか。見るだけならお好きにどうぞ。

俺は、シュニィの頼みとやらが記された、その書類を見つめた。

それは任務書だった。

…しかも、これまで類を見ないような任務。

俺は一通り読んで、思わず目を丸くしてしまった。

「…シュニィ、お前、これ…」

「…そこにある通り、非常に特殊な任務なので…。なかなか頼める方がいなくて…」

困り顔のシュニィ。

「私はそういうの、全然経験がなくて…」

「そ、そうか…。まぁ、俺も別に…得意って訳じゃないが」

「実は先程、イーニシュフェルト魔導学院に行って、シルナ学院長先生にもお話したんです」

え?この任務書の中身を?

「…そしたら、何だって?」

「チョコレートを片手に…完全に固まってしまって…」

…あー…。

…こういうの、駄目なんだっけ?あの人…。

「震えながら羽久さんの後ろに隠れてしまって…」

「そ、そうか…」

「傍に居たイレースさんは…『そんなものは気の所為です』の一点張りで…」

何処までも現実的だからな。彼女は。

「むしろ乗り気だったのは、話を聞いていた元暗殺者のお二人で」

あの二人は…良くも悪くも怖いもの知らずだからな。

こういう任務は、意外と向いてるのかもしれないが…。

「でも、あいつらまだ学生だろ?」

「はい。イレースさんに、『授業に出なさい』って怒られてました」

…だろうな。

ある意味で大人より頼りになる奴らだが、頼めるものなら頼みたいが…。

…あいつら、聖魔騎士団じゃないんだよ。

あくまであの二人は、イーニシュフェルト魔導学院の生徒。

聖魔騎士団の任務に巻き込む訳にはいかない。

まぁ、今まで散々巻き込んではいるけども…。

あいつらの本分は学業なんだから、そちらを優先させるべきだろう。

…で、俺にお鉢が回ってきたと。

「…お願い出来ないでしょうか?」

困り顔のシュニィ。

任務の内容が内容だけに、誰にでも気軽には頼めないのだろう。

困りに困って、シュニィがこの話を俺のもとに持ってきたのだと分かる。

分かるからこそ、断るのは忍びなかった。

…仕方ないか。

「分かったよ。俺が引き受け、」

「大丈夫、大丈夫。どんな任務でも、私とジュリスがばっちり解決してあげる」

ぐっ、と得意げに親指を立てるベリクリーデ。

…は?