神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

しばらくの間、花火を見ていたベリクリーデだが。

「…むにゃむにゃ…」

…段々と、眠くなってきたらしい。

こんな人混みと喧騒の中で、しかも花火のどんどんいう音も響いてるのに…よく眠くなるもんだな。

何処ででも眠れるタイプか?

…その割には、よく俺の寝室に潜り込んできたものだが。

そういや、普段ならこの時間、おこちゃまベリクリーデはそろそろ寝る時間だもんな。

「眠いのか、ベリクリーデ」

「うーん…。…らいじょーぶらよ…」

「…ほぼ寝てるじゃん」

何が大丈夫、だよ。呂律回ってないし。

こんな人混みで寝込んでしまったら大変だ。

「…仕方ない。花火はまだ途中だけど、そろそろ引き上げるか。…クロティルダ、良いか?」

「あぁ。もう充分だ」

そうか。悪いな。

「ほら、ベリクリーデ。起きろ。しゃんとして歩け」

「歩いてるよー…」

その千鳥足でか?

人混みなんだから、ふらふら歩くんじゃない。

…すると。

「…姫」

クロティルダが、スッ、とベリクリーデの前に腰を下ろした。

こ、この構えは。

「ありがとー、クロッティ…」

ベリクリーデは半分寝ぼけながら、クロティルダの背中に身を預けた。

クロティルダは軽々と、ひょいっ、とベリクリーデを背負い上げた。

…クロティルダにおんぶされたベリクリーデは、あっという間に、すーすーと寝息を立てていた。

…お前って奴は。

「よし。帰るか」

「…重くないのか?そいつ…」

「なんてことはない。…命の重さに比べれば」

唐突に重いことを言うんじゃない。

「…でも…確かに、昔に比べると、重くなったのかもしれないな」

「…」

つまりお前は、昔、ベリクリーデをおんぶしたことがある、って言いたい訳だな?

…匂わせ、うぜー…。…そういうのは黙っとけよ。

…まぁ、でも。

今ここで、昔のことを詮索するのはやめておくよ。

無粋だからな。

「…それじゃ、帰るか」

「あぁ」

「…疲れたら言えよ。背負うの、代わるから」

「大丈夫だ。問題ない」

…結局。

クロティルダは、一度も「疲れた」と言い出すことはなく、ベリクリーデを背負って帰った。