神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

くじ引きの後。

「…!ジュリス、クロティルダ。あれ見て」

ベリクリーデが、また何やら見つけたようだ。

ベリクリーデが指差したのは、家族連れで来ているらしい、小さな女の子。

その女の子は、片手に水風船を持っていた。

ピンクの模様の水風船を、ばいんばいんして遊んでる。

所謂、ヨーヨーだな。

あー…。あれもあるあるだよな。

「あれ楽しそう!私も欲しい」

目をキラキラとさせるベリクリーデ。

…あのなベリクリーデ。あれは、小さい子供が遊ぶものであって…。

「簡易的な鞠つきのようだな。興味深い」

…クロティルダまで。

お前さ、「興味深い」って言葉を使えば何でも許されると思うなよ。

「ジュリス、ねぇ。あれ、あれ」

「はいはい、分かった分かった…」

ヨーヨー釣りの屋台、ヨーヨー釣りの屋台…。

…お、あるある。あれだな。

ヨーヨー釣りの屋台には、小さな子供が群がっていた。

…その中に混じる大きな大人が二人。

ベリクリーデとクロティルダである。

…すげー恥ずかしいんだけど?

何で、俺が恥ずかしい思いをしなきゃいけないんだよ。

「これは好きなものを選んで良いのか?」

「…どうぞ…」

「わーい。緑色のにしよっと」

屋台のおっちゃんから、紙のこよりをもらったベリクリーデは。

勢いよく、ぼちゃんと水に浸けてしまった。

止める暇もなかった。

…あ。

一瞬にして、たっぷりと水を含んでしまったこよりは。

あっという間に、プチッとちぎれた。

ベリクリーデは、しばしちぎれたこよりを見つめて。

「…ふぇ」

「ちょ、だ、大丈夫だって。取る、取るから」

こうなったら、俺も子供達に混じってヨーヨー釣りに参戦するか、と思われたが。

「…緑色だったな」

え?

クロティルダは、いつになく真剣な眼差しで。

一本のこよりを手に、素早く、ベリクリーデが欲しがっていた緑色のヨーヨーを釣り上げた。

1個だけではない。

素早く、かつ正確な手付きで、2個目、3個目を次々釣り上げる。

すげぇ。初めてとは思えない手さばき。

隣で釣ってた、ちびっ子もびっくり。

あと、あまりの大人気のなさにびっくり。

「…釣れたぞ」

クロティルダは結局、一本のこよりで、12個ものヨーヨーを釣り上げた。

「わーい。ありがとうクロティルダ!」

「良かったな」

ぞろっ、と大量のヨーヨーを手に、ご満悦のベリクリーデ。

…この天使、無駄なことで運と才能を使い過ぎじゃね?