神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

シュニィに見送られ、俺達は聖魔騎士団魔導隊舎の玄関から出ると。

そこで、とある人物と鉢合わせた。

「あ、見て無闇君。美男美女達が歩いてくるよ」

「は?」

くるりと、こちらを振り返ったのは。

俺と同じく聖魔騎士団魔導部隊大隊長仲間の、無闇であった。

それから、その無闇の相棒である月読も。

「おぉ…。お前らか…」

ここで会うとは、奇遇だな。

月読は、珍しい格好をしていた。

俺達と同じ。浴衣を着ているのだ。

月読は、赤地に白とピンクのユリが描かれた、華やかな浴衣を着ている。

ベリクリーデと違って、ちゃんとお揃いの下駄も履いている。

へぇー。似合うな。

一方の無闇は、いつもと変わらない普段着だった。

月読は俺達に気づくなり、はしゃいだ声を上げた。

「あ、その格好。君達もこれから、花火大会に行くんだね?」

「あぁ…。…そうだよ。お前達もか?」

「そうだよー!良いでしょ?無闇君と花火大会デートなの」

それは良かったな。

無闇の方は、全然デートって雰囲気じゃないみたいだが。

「見て、この浴衣。可愛いでしょ?」

月読は嬉しそうに、自分の浴衣を見せびらかした。

「あぁ。よく似合ってるよ」

これは本音である。お世辞ではない。

赤というと、けばけばしい印象があるかもしれないが。

月読は、その華やかな色に負けない、小悪魔的な魅力を持つ女性である。

むしろ、赤くらい派手な色でないと似合わないかもな。

「そうでしょう?だって、無闇君。私、似合うって」

「そうか」

月読は、無闇に自慢げに話しかけたが。

無闇はいつも通り。顔色一つ変えなかった。

淡々としてるなぁ。

「もー。ちゃんと真面目に見てよ。女の子が『似合う?』って聞いたら、『似合うよ』って言うものよ」

…同意。

「まったくもう。女心が分かってないよなー。無闇君はさ」

「俺は男だからな」

「そういう意味じゃなくて!」

まぁ、無闇はそういう奴だから。

悪意はないんだよ。…ちょっと朴念仁なだけで。

それが無闇の長所でもあり、短所でもある。

「良いなー。そっちのジュリス君達は浴衣着てくれて」

「え?」

「無闇君にも浴衣、着て欲しかったのになー。無闇君たら、『興味ない』って言って、着てくれないんだよ」 

あー…。…男はまぁ、仕方ないんじゃねぇの?

なかなか、男女でビシッと浴衣を着て歩いてるカップルって見かけねぇぞ。

大抵二人共私服か、浴衣を着ていたとしても女性だけ、というケースが多い。

いや、男として言わせてもらうけどさ。

女性の場合、メイクして髪をセットして浴衣を着たら、大抵どんな人でも似合うけど。

男だと、メイクで誤魔化すって訳にもいかないからさ。

似合わない男は、本当に似合わないんだよ。

俺みたいにな。

で、マジで浴衣の似合う男…クロティルダみたいな…人を見かけると、そのあまりの格差に落ち込んでしまうんだよ。

…俺みたいにな。