神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

クロティルダは少しも嫌がることなく、あっという間に、俺の用意した浴衣に着替え。

俺達の前に登場した。

「どうだ?…人間の服を着るのは初めてだ」

「わー。クロティルダ、かっこいい!」

これには、ベリクリーデも目をキラキラさせて絶賛。

…。

…俺は貶してやるつもりだった。

高貴な天使様(笑)には、やはり人間の服は似合わないな、とか。

俺と同じく、浴衣を着るんじゃなくて、浴衣に着られてるな(笑)とか。

馬鹿にしてやるつもりだったんだよ。

…でも、出来なかった。

それをやると、俺があまりにも惨めになると分かっていたからだ。

だって、この男。クロティルダ。

…浴衣姿、めっちゃ似合うんだもん。

畜生。マジで舌打ちしたいくらい似合う。

つーか、元々背が高くてスラッとしているせいか、何を着ても大体似合うんだよ。

人間の服だろうと浴衣だろうと、何でも颯爽と着こなしてしまう。

良いかシュニィ、そしてベリクリーデ。こっちが本当の彦星様だ。

俺じゃない。…悲しいことに。

やっぱりイケメンは得だよなぁ。

そもそも、こいつの浴衣を見立てていた時から、嫌な予感はしてたんだよ。

あいつ背ぇ高いし、イケメンだから、浴衣でも何でも似合うだろうなぁ、って。

着せてみたら、案の定だった。

俺が、内心悔し涙を流していることも知らず。

「ねぇねぇ、ジュリス。見て、クロティルダも格好良いよ」

ベリクリーデは無邪気に、俺の目の前でクロティルダを褒めやがる。

お前は素直な奴だよ。…俺だけだな。卑屈なのは。

「…あぁ…。…そうだな…」

ベリクリーデ、お前と並ぶと、まさに彦星と織姫だよ。

良かったな、畜生。

いっそこのまま、花火大会、二人で行ってくれば?

この二人の間に挟まったら、俺、どう見ても邪魔者じゃん。ただの引き立て役じゃん。

惨めだなぁ…。

…しかし、ベリクリーデは何を思ったか。

「でも、私はやっぱりジュリスの浴衣の方が好きだな」

…などと言っていた。

…何言ってんの?

同情?同情なのか?

気遣いは嬉しいけど、今のそれは俺が余計惨めになるだけだぞ。

「…お前ら、いっそこのまま二人で…」

「よーし、ジュリス、クロティルダ。一緒に花火大会行こう」

「あ、ちょ、おい。引っ張るなって」

クロティルダの浴衣姿を見て、俺は花火大会に行く気力が…と言うか、自信がなくなったのに。

ベリクリーデは、俺を連れて行く気満々だった。

…はぁ。分かったよ。

よく考えたら、ベリクリーデとクロティルダを二人っきりにするのも、非常に癪だからな。

精々、美男美女の引き立て役になってやるよ。