神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…30分後。

「出来た?」

「…おぉ。出来たぞ」

…我ながら、なかなかの出来。

俺が選んだベリクリーデの浴衣は、薄紫地に、華やかな青い薔薇模様の浴衣。

そこに白い帯を結んで、浴衣とお揃いの青い薔薇の髪飾りをつけた。

同じく、浴衣とお揃いの、丸い巾着バッグを持たせた。

足元は、下駄を履くのが普通だが。

ベリクリーデみたいな落ち着きのない奴に、下駄なんか履かせたら。

絶対、まともに歩けずにすっ転ぶに決まってる。

その為、仕方なく青色のぺたんこサンダルを履かせておいた。

よし。これで用意は完璧。

「似合う?ねぇねぇジュリス。似合う?」

いっぱいおめかしして、普段と違う格好をしているのが余程嬉しいのか。

ベリクリーデが、うきうきとそう聞いてきた。

…まったく何回めだか。

「はいはい。似合ってる似合ってる」

「ほんと?」

「馬子にも衣装だな」

「やったー。まご〜」

だから、馬子だって。

「…ジュリスさんたら、本当に素直じゃないんですから…」

…というシュニィの呟きは、やっぱり聞こえなかったことにして。

「あのね、ジュリスも似合ってるよ」

「え?」

ベリクリーデは、キラキラとした目でこちらを見つめていた。

「ジュリス、凄く格好良いよ。ね、シュニィ」

「えぇ、そうですね。私も思ってました」

…おいおい。シュニィまで何言ってんだ。

女に比べたら、男の浴衣姿なんて大したことねぇよ。

それに、俺あんまり和装似合わないしなぁ。

「七夕の王子様みたいだ」

「彦星様のことですか?」

「そう、それ」

七夕の王子…。…例えが独特だな。

「ジュリスさんが彦星様なら、ベリクリーデさんは織姫様ですね」

「えへへー」

…ったく、シュニィの奴適当言いやがって…。

ベリクリーデはそりゃ、顔だけは良いから、織姫に見えなくもないが。

俺を彦星に例えたら、彦星に失礼だろ。

…それなのに、褒められて調子に乗ったベリクリーデは。

「あ、そうだ。クロティルダにも見てもらおう」

えっ?

「クロティルダー。クロッティ〜」

と、ベリクリーデが呼ぶと。

「…俺を呼んだか、我が姫」

…来やがった。

お前、ずっとベリクリーデの傍で見てたんじゃないだろうな。

このストーカー天使め。

…しかし、今ばかりは丁度良かった。

「…やっと来たな、クロティルダ。お前もさっさと着替えろ」

「…着替える?何に?」

「ベリクリーデが一緒に花火大会、行きたいって言ってただろ」

実はお前の分も浴衣、用意しておいたんだよ。

ベリクリーデに頼まれたから、仕方なく、だぞ。

ったく、何で俺が天使の為なんかに、浴衣を用意してやらなきゃいけないんだが。