神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…そして、迎えた週末。



花火大会当日。

俺は、デパートで買ってきた新品の浴衣を手に。

ベリクリーデを携えて、シュニィの部屋に向かった。

シュニィには、事前に話を通してある。

「シュニィ、俺だ。俺とベリクリーデだ」

こんこん、と部屋をノックすると。

「はい、お待ちしてました」

すぐに、シュニィは扉を開けてくれた。

「来たよー。シュニィ」

「えぇ、いらっしゃい。今日は楽しんできてくださいね」

にっこりと微笑むシュニィ。

…なんか、申し訳なくなってきた。

「ごめんな、シュニィ…。お前は今日、仕事なのに…」

俺とベリクリーデ、それに他の何人かの大隊長にとっては、今日は休日なのだが。

シュニィと、それから数名の大隊長は、今日も普通に出勤して仕事をしている。

俺達だけ遊びに行って、申し訳ない。

…なんかお土産買って来よう。

「良いんですよ、そんなこと気にしないでください。その代わり、私は先週お休みをもらって、子供達と夏祭りに行けたんですし」

「…でも…。…アイナとレグルスは、花火、行きたがってたんじゃないのか?」

「えぇ、そうですね…。でも、アトラスさんが連れて行ってくれてますから」

あ、アトラスは今日、休みなのか…。

それでシュニィの代わりに、アトラスが二人の子を花火大会に連れて行ってくれてるんだな。

成程、それなら安心だな。

「それじゃ、早速…。浴衣の方を」

「あ、そうだったな…」

いつの間にか、話が脱線してしまっていたが。

ここに来た本題を果たさなくては。

俺は、新品の浴衣をシュニィに渡した。

着付けの為である。

ベリクリーデの着付け、シュニィに頼もうと思って。

最初は美容院にでも頼もうかと思ったが、花火大会の日だけあって、既に何処も予約がいっぱいで。

するとシュニィが、「私で良ければ」と言ってくれて。

それならと、シュニィに頼むことにしたのだ。

「ベリクリーデ。お前、シュニィに浴衣を着せてもらうんだぞ」

「!…ジュリスは?」

え、俺?

「俺は自分で着れるから。大丈夫だよ」

実は今日、自分用にも浴衣を新調してあるのだ。

ベリクリーデの浴衣と一緒に、男モノの浴衣も買ってきた。

ベリクリーデが浴衣、「一緒に着よう」ってせがむものだから…。

「ジュリスは、着付け、っていうの出来ないの?」

「いや…。…出来るけど…」

一応…。昔取った杵柄、って奴で…。

シュニィに着付けを頼みはしたものの、それは、何も着付けが出来ないからではない。

俺も一応、出来なくはないのだ。着物や浴衣の着付け。

美容院の予約は取れなかったし…。もし、シュニィがベリクリーデの着付けを申し出てくれなかったら。

その時は、俺がやろうと思ってたよ。

…でもな。

それは決して、望んで、進んでやりたい訳じゃないからな。