神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

その後、俺はこんこんと、ベリクリーデとクロティルダに説明した。

シュニィが着ていたのは浴衣であって、十二単衣ではない。

ベリクリーデは勿論、クロティルダまで、ぽやんとして聞いていた。

この野郎。お前天使なら、浴衣くらい知っとけよ。

「…分かったか?」

「うん、分かった」

よろしい。

「…でも、浴衣って何処で作れば良いの?」

え?

その質問に、俺は一瞬面食らってしまったが。

答えたのは、クロティルダだった。

「自分で縫うんじゃないのか?」

は!?

「まずは生糸を紡いで布を作り、その布を染めて反物を作り…」

「ほぇー」

「仕立てをして、縫製だな。そうして初めて出来上がる」

「凄いね。シュニィも頑張ったんだね」

…。

…こいつら、蚕を飼うところから始めるつもりか?

何年越しの計画だよ。

花火大会は週末なんだぞ。絶対に間に合わない。

それとシュニィは、決してそんな努力をして、あの浴衣を手に入れた訳ではないと思うぞ。

こいつら、本当に考えが極端って言うか…世間知らず過ぎる。

バナナジュースでさえ、バナナを植えるところから始めるような奴らだからな。

「…あのな、今は便利な世の中だから。糸から作らなくても、ちゃんと売ってるよ」

「え、売ってるの?」

「当たり前だろ…」

気づけ。現代は便利な世の中だ。

そりゃあこだわる人は、反物から選んで、オーダーメイドで仕立ててもらうんだろうけど。

大抵の人は、既製品を買ってると思うぞ。

「…浴衣については、俺が用意しておくから。お前らはもう何もするな。分かったか?」

「ほんと?良いの?」

「良いよ…」

…自ら、厄介事を引き受けているように見えるかも知れないが。

しょうがないじゃん。

放っといたらこいつら、マジで聖魔騎士団隊舎の中で、養蚕を始めかねない。

それを止める為には、俺が動くしかなかった。

すると、ベリクリーデがこう聞いてきた。

「ジュリスも着るの?」

「え、俺?」

…何で俺まで?

「ジュリスも一緒に着よう。きっと似合うよ」

「いや、俺は別に…」

「クロティルダも一緒に着ようよ」

何でこいつまで。

「俺は似合わないと思うが」

「そんなことないよ。みんなで着よう」

…ったく。ベリクリーデの我儘が始まってしまったよ。

言い出したら聞かない、どころか下手をしたら本当に養蚕を(ry。

…はぁ。やるしかないか。