神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

お前、そんなにりんご飴、気に入ったのか。

「りんご飴って、おうちで作れるのかな?」

「そうだな…。…作ろうと思えば、作れなくもないけど…」

小振りなりんごを買ってきて、それに砂糖を溶かして…。

と、考えていると。

「良いなぁ、良いなぁ。ねぇ、私達も夏祭りデートしようよ、無闇君」

会議室に、ふわり、と美しい女性が現れた。

無闇の背後に、さながら浮遊霊のようにふわふわ浮いている。

俺達にとっては、驚くに値しない。

彼女は、無闇の持つ魔導書、『死火』の化身…月読だ。

「しない」

無闇は月読のおねだりを、一刀両断で断っていた。

「ねぇ〜。良いじゃん、たまにはー」

「大体、夏祭りは先週終わったんだろう」

「きっと、何処かでまだやってるって。この際王都じゃなくても良いよ。ねぇ行こうよー」

「…重い」

月読は無闇の頭に顎を乗っけて、ぐりぐりしながらおねだりしていた。

非常に微笑ましい光景だが、当の無闇は迷惑そうだった。

…まぁ、これはこの二人のじゃれ合いみたいなものだ。

「…そういえば、今週末に王都セレーナの海岸通りで花火大会が開催されるそうですよ」

と、教えてくれたのは、大隊長仲間のクュルナだった。

「え、そうなのか?」

「えぇ…。ポスターが掲示板に貼ってありました」

へぇ…。

「良かったな。クュルナ、それ羽久を誘って行ってきたらどうだ?」

「なっ。べ、別に私は…そ、そういうつもりで言った訳じゃ…」

違うのか?

でも、後悔するくらいなら、当たって砕けた方が良いと思うぞ。

経験則である。

「花火大会だって!無闇君、ねぇ行こうよー」

「行かない」

「ねぇねぇ。良いじゃん、行こうよ。ねぇ〜」

「…」

無闇の肩に手を置き、頭を顎でぐりぐりしておねだり。

…何だかんだ言いつつ、行ってくれるんだろうな。無闇は。

あれで、結構月読には甘いんだよ。

…そして、俺も…。

「…??はなび?」

ベリクリーデは、きょとんと首を傾げていた。

…こっちはこっちで、無自覚におねだり上手なんだよなぁ。

「あぁ、花火大会があるんだって」

「それ、りんご飴、あるの?」

「あると思うよ」

花火大会が開催されるなら、屋台もたくさん出るだろうし。

その中に、多分りんご飴もあるだろう。

「行くか?ベリクリーデ」

「ジュリスは?ジュリスは一緒なの?」

「ん?あぁ…。…そうだな」

ベリクリーデが行くなら、俺も行かなきゃいけないだろう。

引率教師的な役割で。

一人にしておいたら、何処で何するか分かったもんじゃないからな、ベリクリーデは…。

危なっかしくて、目を離しておけない。

「じゃあ、行く。ジュリスと一緒に行く」

「そうか。分かったよ」

「やったー」

両手を上げて喜ぶベリクリーデ。

良かったな。