神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

アイスクリームを、小皿一杯くらい食べた後。

「ふー…。美味しかった」

「良かったな。…まだ食べるか?」

「ううん」

もう要らないのか。

大好物とはいえ、これ以上は受け付けないらしい。

うーん…。やっぱり相当具合、悪いみたいだな。

まぁ、良いか。少しでも食べたんだから。

「…それじゃベリクリーデ。次は風邪薬だ」

「えっ」

えっ、じゃないんだよ。

何の為に、胃に食物を送り込んだと思ってる。まぁアイスクリームだけども。

「風邪薬を飲まなきゃ、治らないだろ。ほら、飲め」

「…うぇぇぇ…」

市販の風邪薬、黄色い錠剤を3つ、ベリクリーデに渡す。

…が、ベリクリーデは、さっ、と身を引いた。

「…やだ」

…駄々をこね始めたぞ。

「やだじゃない。飲め」

ふるふる、と首を横に振る。

…風邪薬を嫌がるちびっ子かよ。

「…それ、苦いんでしょ?」

「苦くねぇよ。そう…ラムネみたいなもんだ」

レモン味のラムネだよ。そういうことにしておこう。

こいつ単純だから、そう言えば騙されて飲むんじゃないかと思ったが…。

「…じーっ…」

警戒心を強めて、ベリクリーデは黄色い風邪薬の錠剤を睨んでいた。

…こういう時は鋭いんだから。

風邪薬って、種類にも寄るけど、変な味するもんな。

良薬は口に苦し、ってことなんだろうけど。

子供用を買ってくるべきだったか。

でも、子供用の風邪薬じゃ効かないだろう。

ベリクリーデは、中身は子供だけど、身体は大人なんだから。

厄介だな、おい。

しかし、俺はこうなることも想定済み。

ベリクリーデみたいな、厄介な大きな子供でもお薬が飲めるように。

世の中には、素晴らしい商品が存在する。

「よし、ベリクリーデ…。じゃ、薬は飲まなくて良いよ」

「え、良いの?」

「うん、良い。寝てれば治るよ、きっと」

「うん…うん。そうだよね!」

…よし。良い感じに騙されてるな。

ベリクリーデがお馬鹿で助かった。

「お薬、苦いもんね。苦いのは飲みたくない」

「だよなぁ。分かる分かる」

分かるか。

心の中でそうツッコみながら、俺はこっそり、ベリクリーデに背中を向け。

小皿に、とあるものを取り出し。

そこに、風邪薬の錠剤を混ぜた。

…よし。

「それじゃベリクリーデ、寝る前に、一口だけで良いから、このゼリーを食べてくれ」

「ほぇ?ゼリー?」

ベリクリーデの前に、ぶどう味のゼリーを差し出した。

「一口だけだから。ほら、あーん」

それなーに、と聞かれる前に。

大きなスプーンでゼリーを掬って、ベリクリーデに食べさせることにした。

「あーん」

風邪薬には警戒しても、ゼリーには全く警戒していないベリクリーデ。

ぶどうゼリーをひとくち、ちゅるんと飲み込んだ。

…よし。飲んだな。