神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「それじゃ、何か食べるか?」

お前昨日、ずっと俺が帰ってくるのを律儀に待ってて、晩飯食べてないんだろ?

で、昨日の夜から朝まで、ろくに眠りもせず過ごして。
 
今朝も何も食べていない上に、現在の時刻はお昼を過ぎているのだが、当然その昼食も摂っていない。

つまり、ほぼ丸一日何も食べていないのだ。

熱が高いと、食欲が失せるのは分かるが。

具合が悪い時ほど、しっかり栄養をつけて、免疫を高める必要がある。

風邪を引いたベリクリーデでも食べられるように、調理室を借りて、色々作っておいたぞ。

優しい味のお出汁で作った卵がゆ、具だくさんの野菜を入れて作ったコンソメスープ。

カットしたフルーツを盛り合わせ、はちみつを垂らして優しい甘さを加えたヨーグルト。

その他、ベリクリーデの要求があれば。

うどんでも湯豆腐でも、アイスやプリンでもゼリーでも。

リクエストに応えられるように、準備を整えておいた。

…しかし、ここまで準備したというのに、ベリクリーデは。

「…。…ぼーっ…」

「…」

…ボーっとしてらっしゃる。

目の焦点が合っていないし、疲れ切ってぐったりした様子。

…どうやら、体調が悪化しているようだ。

「…どうだ?卵がゆ。それともバナナ食べるか?」

「…」

せめて少しでも固形物を、とベリクリーデにあれこれ勧めてみたが。 

どれも受け付けないようで、ふるふると首を横に振るばかり。

…うーん…。…駄目か。

いつもなら、俺が何を作っても「美味しい」「美味しい」って言って食べてくれるからさ。

こうして拒絶されると、結構心に来るよな…。

ベリクリーデは悪くないが。

本当はベリクリーデだって食べたいのに、身体が受け付けないのだから、どうしようもない。

一番辛いのはベリクリーデだから。

「食欲ないのは分かるけど、なんか腹に入れないと、薬飲めないぞ」

空きっ腹に風邪薬を飲むのは良くない。

せめて、少しでも何か食べないと。

「そうだ、お前の好きなアイスクリームがあるぞ。せめてこれだけでも食べてみないか?」

「…んー…」

普段なら飛びつくはずのアイスを前に、微妙な表情のベリクリーデ。

すると。

「…じゃあ、ジュリスがあーんしてくれたら食べる」

…とのこと。

…何故?

「…必要か?それ…」

「うん」

あ、そう…。

俺があーんして食べさせようが、自分で食べようが、味は変わらないと思うが。

まぁ、ベリクリーデがそれで納得して食べるなら、何でも良いよ。

「…分かったよ。ほら、あーん」

「あーん」

ぱくっ。

…よし。ちゃんと食べたな。それで良い。

大好物のアイスクリームが余程美味しかったのか、ベリクリーデは大変満足そうであった。