神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

こんな可愛い恋人を残して、ジュリスの奴は何処へ行ったのか。

「そのジュリスは?何処?」

と、迂闊に聞いてしまったのが間違いだった。

ベリクリーデちゃんは一瞬にして、ずーん、と沈み込んだ。

ごめん。俺、なんか墓穴掘った?

ルイーシュに、肘をつつかれてしまった。

「キュレムさん、迂闊なこと聞いちゃ駄目ですって」

「ご、ごめんって」

「…ジュリス…。…帰ってこないの」

えっ。

ベリクリーデちゃんは、しょんぼりとして言った。

「…ジュリス、帰ってこないの」

またそう言って、しゅーん、と落ち込んでしまった。

…帰ってこない?

何だあいつ。ベリクリーデちゃんを置き去りにして何処行った。

「どっか出掛けたのか?…任務?」

「…うん。夜までに帰るって言ったのに」

「…そりゃ大罪人だな」

既にすっかり暗くなっているのに、未だに戻ってこないと。

それでベリクリーデちゃんは、わざわざ隊舎の玄関までやって来て。

ジュリスが帰ってくるのを、今か今かと待っているのだ。

…ジュリスが作ってくれた、でんでん太鼓で遊びながら。

…なんて健気な話だよ。

こんな健気で素直な良い子を置いて、あの馬鹿、何処で油を売ってるんだ?

「ジュリス…。…帰ってこないの」

泣きそう。

なんとかして励まさないと。なんか俺が泣かせたみたいじゃん。

泣かせてるのジュリスだけど。

「大丈夫だって、ベリクリーデちゃん。そんな落ち込まなくても」

「帰ってきたくないのかな…?」

「ないない、それはないって」

こんな可愛い嫁がいるのに、帰りたくない訳ないじゃん。

そんな贅沢言ってみろ。俺が代わりにぶっ飛ばしてやる。

「多分、任務が長引いてるんでしょうね。予定では夜までに終わるはずだったんでしょうけど…」

「…だろうな」

でなきゃ、ジュリスがこの時間まで帰ってこないとは思えない。

しかも、無断で。

「大丈夫だよ、ベリクリーデちゃん。きっともうすぐ帰ってくるって」

「…」

「中で待ってようぜ。一緒にざるそばでも…」

と、誘ったのだが。

「…」

ふるふる、と首を横に振るベリクリーデちゃん。

…駄目か。俺とルイーシュじゃ。

…そりゃそうだよなぁ。ジュリスじゃなきゃ…。

「…へくちっ…」

くしゃみしてるし…。

ジュリスが噂してんのかもね。

「…ここで待ってるの」

「…あ、そう…」

…さながら、飼い主が戻ってくるのを待つ子犬のよう。

ジュリスのヤツ、早く戻ってきてやれよ。