神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

まず最初の問題は、任務の現場に着いた時に始まった。

俺は予定通り、朽ちかけた家屋の解体を行おうとしたのだが…。

ここで、トラブルが起きた。

その家屋の、お隣の家から。

顔を真っ赤にして激怒したおじいさんが、怒鳴ってきたのである。

これには驚いた。

曰く、「勝手に壊されたら困る」だの、「こっちまで壊れたらどうしてくれるんだ」だの。

「この家は自分がまだ子供の時からあったのに」だの、「誰の許可を得て壊そうとしてるんだ」だの。

いやいやおじいちゃん、それあんたに関係ないだろ。と。

大丈夫だから、あんたの家は壊さないから。と。

何度も何度も、言葉をオブラートに包みながら伝えたものの。

ちょっと認知症も入っているらしいおじいちゃん、全然こっちの話を聞いてくれない。

大声上げて地団駄を踏む姿は、最早目も当てられなかった。

しまいには、「ここは俺の家だ!勝手に壊すとは、どういう了見だ!」とか叫び出して。

俺は思わず、天を仰いでしまった。

…あのな、ここあんたの家じゃねーから。他人の家だから。

あんたこそ、口を挟む権利はないんだよ。

しかし、何とか穏便に済ませようとすればするほど、どんどんヒートアップ。

見物人が出るほどの大騒ぎをして、ついに俺は説得を諦めた。

こうなったら、もう偉い人に出てきてもらうしかない。

今回の依頼を持ってきた解体業者に連絡、近隣住民とトラブっていることを伝える。

すると解体業者も驚いて、急いで応援を呼んでくれたのだが。

俺のその行為が、更におじいちゃんを激怒させてしまった。

しかも、現場に駆けつけてくれた解体業者の人が、まだ若いお兄さんだったことが災いし。

「お前のような若造じゃ話にならん!上司を呼べ!」という横暴な叫び声をあげ。

意味不明な理由で怒鳴られ、半泣きのお兄さんは。

ついに埒が明かなくなったのか、やむなく上の人を呼ぶ。

で、また解体業者の上の人が現場に駆けつけて…と。

…ここまでで、既に5時間以上が経過していた。

外、もう暗くなってきてんだけど?

予定なら、もうとっくに解体を終えて、後始末を済ませて。

ベリクリーデにお土産でも買って、意気揚々と聖魔騎士団に帰っていたはずなのに。

俺、一体ここで何やってんだろう?

…で、最終的にどうなったのかと言うと。

解体業者の上司がやって来ると、今度はその上司にも文句をつけ始め。

多分このおじいちゃん、誰が出てきても文句をつけるんだな、ということが判明。

困り果てた俺と解体業者のお兄さん達は、ついに最終手段を使うことにした。

市民の味方、警察を召喚したのである。

一応、ちゃんとおじいちゃんに前置きはしたぞ。

「おじいちゃん、これ以上はちょっと、偉い人呼ぶことになるよ。警察に来てもらうよ」と言うと。

「おぉ、呼びたきゃ何でも呼んでみろ!警察でも聖魔騎士団でも、呼べるものなら呼んでみろ!」だってさ。

…俺、その聖魔騎士団なんだけど?

人の話、ぜーんぜん聞いてないんだから。

ベリクリーデでさえ、もうちょっと聞き分けが良いっての。