神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

ジュリスside


ーーーーー…アーリヤット皇国と、天使との一連の騒動が収束してしばらく経った、ある日の朝。





「じゅーりーすー。あーそーぼー」

…来やがった。

相変わらず、ノックもせず。朝っぱらから。

幼稚園児みたいな挨拶と共に、今日も元気にベリクリーデが俺の部屋を訪ねてきた。

「来るな!」と言っても、「立入禁止」と言っても、決してへこたれることのないベリクリーデ。

追い返そうとしても、お得意の「ほぇ?」とか「ふぇ?」で首を傾げて誤魔化し。

何だかんだ、毎回俺の部屋に居座っている。

つまり、追い返しても無駄ってことだ。

…はぁ。畜生。

「何だよ…今日は…」

「あそぼ」

出たよ。ベリクリーデの専売特許の一つ。「あそぼ」。

ちっちゃい子供ならともかく、良い大人がさぁ。

あそぼ、じゃねぇんだよ。

しかし、ベリクリーデはそんな正論何のその。

「松ぼっくりで遊ぼー」

とのこと。

…松ぼっくり…?

よく見ると、ベリクリーデはいくつもの松ぼっくりを持ってきていた。

「お前、それ…」

「松ぼっくり」

それは見たら分かるんだけど。

「今朝早起きして、裏庭で採ってきたばかりの新鮮な松ぼっくりだよ」

えへん。

得意げなところ悪いが、そんな朝採れ新鮮野菜みたいに言われても、それはただの松ぼっくりである。

松ぼっくりに新鮮も何もあるかよ。

「早起きは三松ぼっくりの得、だねー」

そんなことわざはねぇ。

「はい、ジュリス。松ぼっくりであそぼ」

その場にペタッ、と座り、松ぼっくりを床に並べ始めるベリクリーデ。

「ちょっと待て。勝手に置くな。俺は遊ぶなんて一言も言ってな、」

「…前、ジュリスに遊ぼって言ったのに」

は?

ベリクリーデは床にぺたんと座り込んで、しょんぼりしながら言った。

「松ぼっくりでフクロウ作って遊ぼって言ったのに…。ジュリス、私のこと忘れてた…」

一体何を言って、と少し考えたが。

すぐに思い出した。

そうだ。アーリヤット皇国とゴタゴタしてた頃。

情けなくも『ムシ』に侵された俺は、一晩にしてベリクリーデのことを忘れてしまった。

そのせいで、ベリクリーデがいつも通り遊びに来た時。

随分…結構、酷いことを言ってしまったのだ。

ベリクリーデは、自分でも無自覚の不思議な力を使って、俺を浄化。

『ムシ』を身体の中から追い出してくれたお陰で、俺はベリクリーデのことを思い出した。

その後は、乱入してきたシュニィと揉めてしまい、イーニシュフェルト魔導学院に移動して…。

…まぁ、色々あったんだよな。

それはさておき。

あの時確かベリクリーデは、今日と同じように松ぼっくりを持ってきて。

フクロウ作って遊ぼう、とか言ってたっけ…。

…やっと思い出したよ。