神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

そして、時間が経ち夕方。

社会見学に行っていた生徒達が、そろそろ学院に帰って来る頃。

「入りますよ。学院長」

「あ、イレース…」

シルナの寝室に、イレースが訪ねてきた。

何でイレースが、と思ったが…今はもう、放課後の時間なんだっけ。

「パンダの具合はどうです」

と尋ねるイレースに、俺はしーっ、と口元に指を立てた。

イレースはすぐに口をつぐみ、そしてベッドに転がっているパンダ…ならぬ、シルナを一瞥した。

「…zzz…」

シルナは、間抜けな顔でベッドに横たわり、寝息を立てていた。

俺も、午後にナジュの代わりに実技授業を行って。

それが終わって、またシルナの様子を見に来たら…こうして、すっかり夢の中だったのである。

ようやく諦めて眠ったのか…。

それとも、令月の薬湯が効いたのか。

真っ赤だったり真っ青だったりしたシルナの顔色は、今ではすっかり良くなっている。

それを見てイレースは、皮肉交じりに言った。

「…ふん。呑気なものですね」

「まぁまぁ…」

良いじゃないか。

イレースは見てないから知らないだろうが、大変だったんだぞ。さっきまで。

「しかも、部屋の中に異臭がしますね…。何ですかこれは」

「う、うん…。まぁ、色々あって…」

「今日、元暗殺者組が頭のてっぺんに枯れ葉をくっつけて授業を受けていましたが、あれと何か関係があるんですか」

「…」

…なんて言ったら良いのか、俺には分からないよ。

多分周囲にいたクラスメイト達も、イレースと同じことを考えていただろうな…。

「…まぁ良いです。治ったんなら」

「あ、あぁ…」

「明日からは、また授業に復帰出来そうですね」

「…お手柔らかにな…」

病み上がりだろうが、イレースには関係ない。

…とはいえ、こうして放課後に様子を見に来てくれた辺り。

一応、心配はしてくれてたらしい。

それだけでも、イレースの優しさだと思おう。

「寝ているのなら起こすつもりはありません。私は忙しいので、もう戻りますよ。明日の朝までには完治させるよう伝えておいてください」

「お、おぉ…」

気合いで治せと。そういうことなのか?

世の中、気合いだけじゃどうにもならないことはある。

「おっと。しっかり消毒をしておかなくては…」

イレースは、消毒スプレーをしゅっ、しゅっ、と何度も噴かしてから。

さっさと、シルナの寝室を出ていった。