神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

聞いたところによると。

今は授業中の時刻なので、マシュリは丁度、中庭で日向ぼっこしながらお昼寝していたのだとか。

するとそこに、俺が助けを呼ぶ声が聞こえてきて。

何事かと、駆けつけてくれたらしい。

…本当に、マシュリがいてくれて良かった。

今頃、マジでシルナの死因が「白ネギ」になるところだった。

…で、その後。

鼻の良いマシュリは、シルナの寝室に残る薬湯の匂いと、白ネギの匂いに辟易したらしく。

用事が終わると、マシュリはまた、いろりの姿で中庭に戻っていった。

日向ぼっこ、邪魔してごめんな。

一方、シルナはと言うと。

「…。シルナ、大丈夫か?」

「…」

酷い目に遭ったシルナは、半べそかきながら、毛布にくるまってしまった。

「…」

…何だか、慰めようもない雰囲気。

ほんと、今日はシルナにとって厄日だな。

まぁ、ほぼ令月とすぐりのせいなんだが…。

でもあいつらも、悪意があってやってる訳じゃないから。

責めるに責められないのが辛いところ。

…しかし。

シルナが落ち込んでいるのは、薬湯のせいでも、ネギのせいでもなかった。

「…おやつ…」

「は?」

毛布にくるまったシルナが、何やらぼそりと呟いた。

「みんな今頃…。…おやつ食べてる頃だね…」

「…あ…」

時計を見て、俺も気づいた。

そうだ。社会見学に行った連中。

今頃、予定通りなら、職場見学の行程を終えて。

公園に集まって、ビニールシートを広げて、おやつタイムと洒落込んでいる時間だ。

シルナの、一番お楽しみの時間…。

「…行きたかったなぁ…」

「…」

…慰めようがない。

マズい薬を飲まされたことより、白ネギを首に巻かれたことよりも。

シルナにとっては、生徒達と一緒におやつを食べられなかったことの方が、精神的に堪えているらしい。

「…元気出せよ、シルナ」

なんと言って慰めたら良いものか。

「今頃生徒達は、シルナセレクションのおやつを、楽しんで食べてると思うよ」

シルナは一緒に楽しめなかったけど。

きっと生徒達は、喜んでおやつを食べてくれてるはずだ。

「そっか…。…そうだよね…」

「あぁ。だから、生徒が帰ってきたらたくさん、思い出話を聞けば良い」

「うん…。…。…でも」

…でも?

「…やっぱり、一緒に食べたかった…」

「…」

…しょぼーん。

…これは重症だな。シルナのヤツ…。