神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「やだ!無理!飲まないから。絶対そんなの飲まないから!」

頑なに抵抗するシルナ。

子供みたいに、毛布を被って隠れてしまった。

「…そっか…。…仕方ないね」

…おっ?

さすがの令月も、その風邪薬は素人には無理だと判断、

しかし。

元暗殺者であるこの二人に、そのような慈悲があろうはずがなかった。

「…『八千歳』、お願い」

「りょーかーい」

令月が指示を出すと、すぐりは両手に透明な糸を絡ませた。

あっ…。

その糸が、ベッドの上のシルナに迫った。

「ひぇーっ!」

シルナが引きこもっていた毛布を、あっさりと剥ぎ取る。

ささやかな防波堤を突破されたシルナは、あっという間に、すぐりの糸でぐるぐる巻きにされた。

そして。

「あばば。あばばばば」

別の糸で、顔をガッチリとホールド。

糸で無理矢理、顎を掴まれ、強制的に口を開かされた。

そして、そこにすかさず令月が。

湯呑みの中身を、ドボドボとシルナの口に流し込んだ。

冷徹なその瞳は、まさに暗殺者のそれだった。

「がぼがぼがぼ」

二人の見事な連携によって、シルナは目を白黒させながら、無理矢理薬を飲まされた。

そしてついに、湯呑みが空っぽになった。

その時ようやく、すぐりは糸をほどいてくれた。

「はい、いっちょーあがりー」

「これですぐに治るよ。良かったね」

…何が「良かったね」なのか。

「おい、おい大丈夫かシルナ」

「あ…あばばば…」

シルナは白目を剥いて、水の中で溺れる人のように、両手をもがもが、と動かして。

「…ちーん」

「あ、死んだ…」

そのまま、意識を失った。

どうやら、耐え難い匂いとマズさのあまり、昇天してしまったらしい。

…シルナ、お前のことは忘れないよ。