神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

そんな訳なので。

「静かにしろ、シルナ。今日は諦めて、部屋帰って休め」

分かってるはずだぞ、シルナ。お前も。

それだけ派手に風邪引いてたら。

「やだっ…。やだーっ!いっじょにいぐいっじょにいぐいっじょにいぐ〜っ!」

あぁ…また、シルナの駄々っ子モードが。

元気な時でも、見るに堪えないのに。

真っ赤な顔をして、鼻水まで垂らしながら駄々っ子してたら。

キモいを通り越して、最早人間兵器。

「ちっ…」

これには、イレースも盛大に舌打ち。

その目は、完全に汚物を見る目だった。

めっちゃ分かる。その気持ち。

俺も今日ばかりは、シルナに同情出来ない。

…すると、そこに救世主が現れた。

「やっほー。何か決まってる感じー?」

「来たよ」

イレースが開け放しにしていた窓から、二人の生徒がやって来た。

令月とすぐりである。

普段なら、「窓から入るな!」とか、「さっさと教室に行け!」とか説教するところだが。

今回ばかりは助かった。

「あなた達、丁度良かった。この人間細菌兵器をつまみ出しなさい」

「いーけど。どーしたの?学院長せんせーは」

「風邪だそうです」

「へぇー。そーいえば顔が赤いね」

「風邪なんだ…。それじゃ、僕が薬を煎じてあげるよ」

と、令月。

「令月、お前そんなこと出来るのか?」

お前は毒を作る方が得意だと思ってたぞ。

「大丈夫。うっかり飲み過ぎると心臓が破れて死ぬけど、ちゃんと微妙な調整をすれば薬になるから」

「ひっ…」

…それ、飲んでも大丈夫なヤツ?

うっかり薬を入れ過ぎて、シルナを殺さないでくれよ。

「それじゃ、ちょっと山に入って薬草を取ってくる」

「行ってらっしゃーい」

令月は、すちゃっ、と窓に足をかけ。

そのまま、外に飛び出していった。

…それは良いけどあいつ、授業は…?…これから授業なの忘れてないよな?

一方、残ったすぐりは。

「はいはい、暴れないで暴れないでー」

「い"や"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!い"っ"し"ょ"に"い"ぐ〜っ!!」

暴れるシルナを、得意の糸魔法をぐるぐる巻きにしていた。

いくらシルナがじたばたと暴れても、すぐりの糸を引き千切ることなど出来るはずもなく。

…大人と子供の立場が、完全に逆転してるじゃん。

「学院長室に連れてってくれ」

「りょーかーい」

「やだぁぁぁぁぁ!」

叫び声をあげるシルナを、すぐりは糸魔法で簀巻きにして、そのまま軽々と運び出した。

…まったく。

「消毒、消毒…」

シルナがいなくなるなり、イレースは消毒スプレーを手に、職員室中にしゅっ、しゅっ、と撒いていた。

…感染ってなければ良いんだが。