神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

さて、社会見学当日。

最後のミーティングとして、朝イチで職員室に集まった教員一同。

…しかし。

「…あのパンダは何処です」

「…さぁ…」

ミーティングの時間になっても、肝心のシルナの姿がなかった。

まさか…。…寝坊?

「…」

イレースは無言で、ピキピキとこめかみに血管が浮いていた。

ひぇっ…。

あの馬鹿シルナ。社会見学当日に寝坊するなんて。

ただでさえシルナが我を通したせいで、イレースのご機嫌が非常に斜めなのに。

これ以上怒らせてどうするんだよ。

「い、イレースさん、そんな顔しないで…。僕、学院長室に様子を見に行ってきましょうか…?」

勇気のある天音が、そう申し出たが。

「放っておきなさい。起きてこない者は、社会見学に行く権利などありません」

ばっさり。

シルナ抜きでも、さっさとミーティングを始めようとする。

…さて、どうしたものか。

こんな肝心な日に寝坊なんて、完全にシルナの過失だが…。

…本当に置き去りにされて、泣きじゃくるシルナを宥めるのは、俺なんだよ。

つまり、俺が動くしかないってことだ。はぁ。

「…天音、俺が様子を見てくるよ」

「あ、はい…」

職員室を出ようとした、その時。

職員室の扉が、ガラガラと開いた。
 
そこに現れた人物…の、有り様を見て、俺は思わず目を見開いた。

「…み"ん"な"…お"は"よ"〜…」

「ひぇっ…」

そこにいたのは、シルナだった。

今、様子を見に行こうと思ってたら、自分から来た。

それは良いのだけど。それは良いのだけど…!

「おぐれでごべんねっ…。ぐずっ、げさからじょっど、おどのじょうじがわるっ、げほっ…」

「ちょ、落ち着けシルナ。なんて言ってるかほぼ分からないぞ」

「ふ…ぶえっくしょん!」

ちょ、こっちにくしゃみを飛ばすな。

「…」

シルナの酷い有り様を見て、イレースは顔をしかめ。

急いで窓に向かい、窓をガラッと開けた。

英断。

「だ、大丈夫ですか。学院長先生…!?」

一方、優しい天音は、慌ててシルナに駆け寄ったが。

「ふぇっ、ふ、へくしょんっ!」

「ひぇっ」

危うくシルナにくしゃみを飛ばされそうになって、慌てて回避。

こちらも英断。

「ぐじゅっ…。ずず…」

…最早、説明する必要も、議論の余地もない。

めっちゃ鼻詰まりの声。盛大なくしゃみ。

そして、シルナの赤い顔。

寝坊の理由も、これで明らかになった。

…間違いない。

シルナは…。…風邪だ。