神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

教員達+元暗殺者組の採血が終わると。

次に、生徒達の採血が始まった。

生徒達にとっても、採血は楽しいものであるはずがなかった。

中には、露骨に「嫌だなー…」という顔の生徒もいたけれど。

それでも、大抵の生徒は、素直に採血に応じてくれた。

未だに柱にしがみついてぷるぷるしてる、そこのおっさんにも見習って欲しい。

子供でさえ頑張ってるのに、このおっさんと来たら。



…しかし…。

「はい、それじゃ次の方どうぞー」

「…」

生徒の採血の様子を、俺は端から見守っていたのだが。

スムーズに列が進んでいると思いきや。

ここで、一つトラブルが発生した。

シルナほどじゃないが、ガチガチに緊張して、既に涙目の女子生徒が現れた。

あれは確か…。二年生の生徒?

「こちらにどうぞ」

看護師さんに、丸椅子に座るよう促されても。

歯をガチガチ鳴らしながら、その場に縫い付けられたように立ち尽くしていた。

…これは不味い。

「おい、だいじょう、」

思わず声をかけようとした、その時。

「マリアナちゃん!大丈夫!?」

「うわっ」

ついさっきまで、柱にしがみついて震えていたはずのシルナが。

生徒のピンチと見るや、しゅばっ、と飛んできた。

この子、マリアナちゃんって言うのか。

どうも一、二年生の生徒の名前はなかなか覚えられなくて。

「が、学院長先生…」

そのマリアナちゃんという生徒は、がくがくと震えながら。

「私…注射、どうしても、駄目で…。怖くて…」

と、打ち明けてくれた。

あぁ…。恐れていたことが。

この子も多分、病的な注射恐怖症なのだろう。可哀想に。

こればかりは、大人も子供も関係ない。怖いものは怖い。

度胸がないとか、甘えてるとか、これはそういう次元の問題じゃない。

「だよね、そうだよね!分かる!」

全力同意のシルナ。

…シルナ。お前は甘えだよ。

「大丈夫ですか?横になって採血しましょうか」

看護師さんも心配して、そう提案した。

そうだな。横になって、少しでもリラックスした状態で採血すれば、あるいは…。

…しかし。

横になろうが座ってようが、そもそも自分の身体に針が刺さることが、怖くて堪らないのだろう。

ぶるぶると震え、怯えていた。

あぁ、見ていられない…。

「…どうする?シルナ…」

「…そうだね…」

無理矢理押さえつける訳にはいかない。そんなことしたら、逆に危険だ。論外。

これほど怯えているのに、宥めすかして採血出来るものだろうか。

「仕方ない。マリアナだけ採血は免除で…」

と、提案したその時だった。

換気の為に開けていた窓に、しゅたっ、と物陰が現れた。