神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

ようやく、採血がどういうものか理解したらしい元暗殺者組。

大人しく、素直に腕を出した。

まぁ、この二人が針ごときを怖がるはずもなく。

むしろ。

「あー、ダメダメ。角度が悪いよ。静脈に針を刺す時は、この辺を指で押さえて…そう、浅い角度でねー」

…すぐりのヤツ、偉そうに看護師さんに指図してやがる。

まぁ、「針を刺す」ということに関しては、あいつらはプロだからな…。

「偉そうな子供だな」と思ってるかもしれない。

でも悪気はないんだ。許してやってくれ。

更に、令月は。

「はい、終わりましたよ」

「え、それだけ?」

「はい。もう結構ですよ」

「そう言わず、もう少し抜いても良いよ。…あと1リットルくらい」

死ぬわ。1リットルも抜いたら。

「えっ、そ、そんな」

「大丈夫。訓練してるから。1リットルくらい抜いても平気だよ」

「…」

令月の台詞に、看護師さんは戸惑い半分、苦笑い半分の複雑な表情だった。

多分、悪い冗談だと思ってるんだろう。

でもな、冗談じゃないんだよ。それ。

普通死ぬだろ、と思うけども。

こいつらなら、令月なら、あながち嘘じゃなさそうで怖い。

大丈夫だ。採血にはそんなにたくさんの血は必要ないから。

「ふー。終わった終わった」

あっという間に、元暗殺者組の採血が終わった。

「でもさー、針の質がイマイチだったよね。あれなら、『八千代』の方が良い針を作るよ」

「そうだね。あれより細くて、かつ、一度に大量の薬液を注入出来る…『アメノミコト』直伝の針の作り方を知ってるから」

挙げ句に、採血針に文句つけてやがる。

あのな…。医療用の針を、お前らの作る毒針と一緒にするんじゃない。

用途が違うから。真逆だから。

看護師さんに申し訳ない。

「何なんだろう、この子達…」みたいな顔しちゃってる。

イーニシュフェルト魔導学院には変人が多い、とか思われてたら嫌だな…。

こいつらが。こいつらとナジュが特殊なだけだから。

それから…イーニシュフェルト魔導学院の「特殊な」人物と言えば、もう一人…。

「…そういや、マシュリは何処行った?」

あいつも、ついでに健康診断してもらえよ。

まぁ、普通の人間ではないものの…。

「マシュリさん…。そういえば、今日はまだ見てないな…」

「どうせ、その辺をほっつき歩いてるんでしょう。あのドラ猫は」

天音と、イレースが言った。

…ドラ猫言うなって。