神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…すると。

「来たよ」

「やっほー。検査って何するの?」

「あ…令月。それにすぐり…」

生徒の令月と、それからすぐりがやって来た。

生徒である彼らも、今年から血液検査の対象である。

「採血だよ」

「さいけつ?」

「血を採って、検査してもらうんだ」

すると色んなことが分かるんだよ。大事な検査なんだ。

「成程、血を…。それは重要な検査だね」

と、真剣な表情の令月。

おぉ…そうだよ。分かってるじゃないか。

シルナより、何十倍も物分かりが良い。

「…分かった。…『八千歳』、止血帯持ってる?」

「勿論」

「じゃあ、僕からやるよ」

と言って令月は、真剣な表情で、懐から小刀を取り出した。

小刀を鞘から出すと、よく研がれた刃が、鏡のようにキラリと光った。

…え、な、何?

「これで手首を切って血を出すから、『八千歳』、止血をお願い」

「りょーかい。死ぬ直前で止めてあげるよ」

ちょっと待て。お前達は何か、とんでもない勘違いをしている。

急いで止めなければ。

「ちょ、馬鹿。お前ら、やめろ!」

「だいじょーぶ。人が死ぬ限界の出血量がどのくらいかは、よーく分かってるから。ちゃんと死ぬ前に止血するよ」

何で自信満々なんだ?

「『八千代』が終わったら、次俺ね。よろしくー」

「うん、任せて。ちゃんとギリギリ死なないところで止血するから」

「よーし、じゃーやろっかー」

令月は自分の手首を出し、そこに小刀を当てた。

「ちょっと待てぇぇぇ!」

俺は、すぐさま令月の小刀を掴んで止めた。

あ、危ないところだった。

こいつらは子供だが、見かけに騙されてはいけない。

二人共、必要とあれば自分の身体でも、他人の身体でも、平気で傷つける。

「え、何?」

「血、採るんでしょ?」

誰が自ら手首を切って出血しろと言った。

「違うわ!誰がそんな危険極まりない方法で採血するか!」

「えっ、違うの?」

ちげーよ。

「針!注射針で静脈を刺して採血するの」

「え?なーんだ。針?」

「小刀要らないの?」

…要らねーよ。何でそう思ったんだ。

お前らはそりゃ、人体のギリギリが分かるだろうが。

俺達、そんなの知らないから。普通に死んじゃうから。

そんな命懸けの健康診断は、御免被る。