神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

天音は、シルナと同じく、採血が苦手らしい。

保健室の先生だからって、注射が得意とは限らない。

「はい、それじゃ始めますねー」

「う〜。…見ないようにしよう…」

天音は敢えて、採血の様子を見ないように、そっぽを向いた。

緊張しているようだが、頑張って耐えている。

偉い。半泣きでコアラみたいに柱にしがみついてる、そこのおっさんにも見習って欲しい。

すると、あっという間に。

「はい、終わりましたー」

「あっ…。ありがとうございます…」

スムーズな手つきで、採血を終わらせてくれた看護師さん。

「ふぅ〜、良かった。無事に終わって…」

一安心の天音。

で、天音が終わると。

「それじゃ、次は僕ですね」

ナジュが、看護師さんの前に座って。

何故か、両腕を差し出した。

「どうぞどうぞ。どちらの手でも、好きなだけ抜いてください。何なら両手でも良いですよ」

お前、不死身だからって。

「えっ…。…いえ、片手だけで結構です…」

看護師さん、困っちゃってるじゃないか。

「そうですか、それは残念です」

何が?

「じゃ、どうぞ。遠慮なく。ジューッと言っちゃってください。ドバーッと、ガバーッと」

およそ、採血には相応しくない効果音である。

戸惑いながらも、看護師さんはナジュの腕に採血をした。

「はい、終わりました…」

「それだけで良いんですか?遠慮せずに、ほらもうちょっと」

「え、いや、これ以上は」

「こら、ナジュ。看護師さんを困らせるんじゃない」

必要以上は要らねぇよ、馬鹿。

こうして、俺とイレース、天音とナジュの採血が、無事に終わった訳だが…。

…残るシルナは。

少しは落ち着いただろうかと、シルナの方に目をやると。

「…ぶるぶる…」

…駄目だ。まだ震えてやがる。

むしろ、俺達の採血の様子を見て、余計に恐怖心を煽られている様子。

「…羽交い締めにして、無理矢理採らせますか?」

強硬策を提案するイレース。

「いや…それはそれで、看護師さんも難しいだろうし…」

身体中に力が入って、余計血管を探しづらいのでは?

出来れば、覚悟を決めて、自発的に採血に応じてもらいたいものだが…。