神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…うん。

別に、良いんじゃねぇの?健康診断。

毎年恒例なんだから。今更ぐずぐず文句言う必要はないだろ。

「はぁぁぁ…憂鬱だよ…。気が重いよ。お陰で、今日はチョコレートがほんの少ししか喉を通らない…」

とか言いながら、既に一箱、チョコレートの箱が空っぽになってるからな。

今は二箱目。

…ほんの少し(当社比)。

食い過ぎだよ、馬鹿。

「羽久が私に失礼なことを考えてる気がする…」

「そうやってチョコばっかり食ってるから、健康診断が不安になるんだよ」

「酷い!」

だって、そうだろ?

健康診断に怯えるってことは、普段、チョコレートの暴飲暴食について自覚があるってことだ。

お医者さんに「甘いものは控えましょう」って言われてしまえ。

「間違いなく体重は増えてるだろうな。チョコでぶくぶく肥えた、デブ学院長として、」

「いやぁぁぁ!」

悲鳴を上げているが、それ自業自得だから。

…しかし。

「羽久、良い?それは違う。違うんだ」

とか言い出した。

「何が違うんだよ」

お前がデブ学院長なのは事実だろ。

あれだけチョコばっかばくばく食べてたら、いくら代謝の良い魔導師と言えども、体調を崩してもおかしくないだろ。

「あのね、羽久。今年から、健康診断に項目が追加されるんだよ」

「え?」

「イレースちゃんが、『その』検査も必要だって…。今年から追加されちゃったんだ…」

…イレースが?

『その』検査って…?

まぁ、イレースは几帳面、かつ潔癖な性格だからな。

必要なものはしっかりと取り入れ、不必要なものは容赦なく切り捨てる。そういう奴だ。

だから、イレースが自ら項目を追加したということは、彼女が必要だと判断したのだろう。

イレースが、項目を追加した検査…。

「…メタボ検査か?シルナの」

「酷い!違うよ!」

あ、違うんだ…。

シルナがあまりにチョコを食べ過ぎるから、メタボ検査を追加したのかと…。

「全員受けるんだよ。私も、生徒も、勿論羽久も!」

「はぁ…。…何の検査なんだ?」

俺も受けることになる…。

受けるのが憂鬱な検査と言えば。

まさか、胃カメラとか?あれ怖いよな。

おぇってなりそうで。

でも、生徒全員が胃カメラ検査を受ける必要があるとは思えないんだが…。

「…あのね、血液検査」

「え?」

「採血だよ、採血。採血されて、血液検査されるの!嫌だよね!」

涙目のシルナ。

…血液検査だと?

あれだろ?静脈に注射して、血を取って診てもらう検査。

「…そういや、やってなかったな…。当分…」

大抵、一般的な健康診断の項目にはよく含まれているが。

そういえば、イーニシュフェルト魔導学院の健康診断には、血液検査は含まれていなかった。

それで、イレースは今年から、教員、生徒共々、血液検査を健康診断に追加したらしい。