神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

あ、ごめん。咄嗟にゴミって言っちゃったけど。

いや、本当に、一見ゴミにしか見えなくて。

ベリクリーデちゃんが、ついにジュリスにゴミを押し付けたのか、と思ったが。

ベリクリーデちゃんは、そんなことをする子ではなかった。

「え…。…あ、何…?」

これには、ジュリスも困惑。

ベリクリーデちゃんはにっこにこで、しかも超得意げ。

「な、何だこれ…?」

ジュリスは、頭の上に乗せられたゴミ(?)を見上げて、首を傾げていたが。

「花冠(はなかんむり)!」

と、ベリクリーデちゃんは自信満々に答えた。

は…。

…花冠?

よく見たら、そのゴミだと思ったもの。

花だ。

多分、その辺で採ってきた野花。シロツメクサ。

そのシロツメクサで、花冠を編んだらしい。

…まぁ、花冠とは思えないくらい雑で、グッチャグチャの仕上がりなんだが。

それで一見、ゴミに見えてしまったらしい。

でも、確かによーく見たら、目を凝らしてよく見たら、百歩譲って花冠と呼んでも良い、くらいの出来栄えである。

ベリクリーデちゃん…。これは一体。

「あのね、これね、ジュリスにあげたかったの」

と、ベリクリーデちゃんは嬉しそうに言った。

「え…?」

「ジュリスがこの間、バナナジュース作ってくれたから。そのお礼がしたくて」

「お礼…?」

「うん。だから、クロティルダに頼んで、花冠の作り方、教えてもらったんだ」

…マジ?

今明かされる、ベリクリーデちゃんの真実。

「最初は上手く出来なくて、ぐちゃぐちゃになっちゃったんだけど…」

「…」

…いや、今のそれも、充分ぐちゃぐちゃに見えるけども。

それは言わないお約束。

「クロティルダに手伝ってもらいながら、やっと上手く出来たんだよ。ジュリスにあげる」

「…」 

これには、俺もジュリスも、超びっくり。

「…!お前、もしかして…」

ジュリスが、とあることに気づいた。

「ここしばらく、部屋に閉じこもってたのは…これを作ってたから、なのか?」

「うん、そうだよ?」

…!

「でも、じゃあ…何でそれを黙ってたんだよ?」

「だって、サプライズにしたかったから」

さ…。

…サプライズ。

「クロティルダに相談したの。ジュリスに内緒で、ジュリスが喜んでくれることをしてあげたい、って」

「…!」

じゃあ、クロティルダもベリクリーデちゃんも、頑なにジュリスから隠れていたのは。

ベリクリーデちゃんが、ジュリスにサプライズの花冠を作っていたから、なのか?