神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

そうだというのに、天使のクロティルダは。

「…あぁ、お前か」

自分に向けられた敵意なんて、まったく気づいていないかのように飄々としていた。

「何やってんだお前ら。こんなところで…」

「我が姫に呼ばれたから、来てみたんだが…。今はこの通り、眠ってしまっている」

「…」

ジュリスは、冷たい目でクロティルダを見下ろしていた。

クロティルダの膝の上には、ベリクリーデちゃんが、無邪気な寝顔ですやすや。

この状況で呑気に寝ていられるなんて、ベリクリーデちゃんはやっぱり大物だよ。

「…何やってたんだ?」

「ん?」

「ベリクリーデが呼んだってことは、なんか用があったんだろ」

…うわぁ…。

めちゃくちゃ険悪な雰囲気…。

正直、俺は無関係なので、今すぐこの場から立ち去りたかったのだが。

それさえ出来なさそうな空気。

もし、ブチギレたジュリスが、天使に襲い掛かったら、それを止めなきゃいけないじゃん。

まぁ、その時は…俺もただじゃ済まないだろうけど…。

「そうだな。用…は、あったんだが」

「…何だよ?」

「悪いが、それはお前には言えない」

「…」

うわぁぁぁぁ。

という、俺の心の叫び。

言えよ。何で隠すんだ。

それを隠すから、余計にジュリスの顔が歪んでいく。

「…もう一度聞く。何やってたんだよ?」

「それはお前には言えない」

…だってさ。

あぁ、もう駄目だ…。火花がバチバチと散って…。

「…あっそ。そうかよ」

しかし、ジュリスはまだ理性を保っていた。

あわや決闘、と思いきや。

それ以上しつこく詮索することはなかった。

じゃあ好きにしろよ、と言わんばかり。

このまま立ち去ってくれ。何事もなく…。

…しかし、悪いことは続く。

「…ふぇ?」

眠っていたベリクリーデちゃんが、ふと目を開いた。

なんつータイミングで起きるんだ、君は。

いっそそのまま寝ておけば、これ以上の火種は生まずに済んだものを。

「起きたか。我が姫」

「…ん〜…。…あれ?」

目を開いたベリクリーデちゃんが、ジュリスに気づいた。

「あ、ジュリスだ。おはよー」

「…おはよーじゃねぇよ…。昼だぞ、今」

「うん。クロティルダと一緒に遊んでたんだけど…眠くなったから寝ちゃった」

「…ふーん…」

遊んでた…遊んでた、ねぇ。

「あのねー、クロティルダと一緒に、ジュリスの、」

「姫」

「…あっ、これ、言っちゃ駄目なんだった」

ベリクリーデちゃんは、何か言おうとしたが。

クロティルダに諌められ、両手で口を塞いだ。