神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「じゅ、ジュリス…!どうして、ここに…」

俺は咄嗟に、ジュリスの視界を遮るように、ジュリスの真正面に立った。

やべぇ。これはやべぇよ。

どれくらいヤバいかって言うと、お湯を入れたは良いものの、うっかり食べ忘れて、半日くらい放置してしまったカップ麺くらいヤバい。

「別に…。論文、書き終わったから。郵便局に持って行って郵送してもらおうと思って」

「あ、そ、そう…」

郵送すんのね?そうなんだ?

畜生。こんな時くらい、その程度の仕事、部下に任せれば良いものを…。

「そうしたら、お前達の声が聞こえてきたんだよ。…俺がどうしたって?」

「いや…あの…」

俺の名前を呼んでたよな?と、じろりと睨むジュリス。

…今更、「何でもないです」とも言えず。

不機嫌なジュリスに睨まれて、まさに俺は蛇に睨まれた蛙状態。

ど、どうす、

「る、ルイーシュ、助け、」

ルイーシュに助けを求めようと、咄嗟に横を見たが。

そこに、ルイーシュはいなかった。

忽然と、瞬間移動でもしたかのように消えていた。

あ、い、つ…!

これはピンチと見るや、すぐさま空間魔法でよその時空に逃げやがった。

俺を置き去りにして。

許せん。あいつのハンバーガーにだけ、ピクルスを倍量にしてもらおう。

あの薄情者…!

「…おい、何だよ」

「えっ?」

「さっきから、何慌ててんだよ…。つーか、何隠してるんだ?」

「うぇっ…!な、何も隠してなんか…!」

「隠してるだろ。おい、退けよ」

ちょ、駄目だって。馬鹿。

世の中には、見てはいけないものが、

「ジュリス、馬鹿。見るなっ…!」

「…。…!!」

ジュリスは、俺の肩をぐいっ、と押し。

背後を見てしまった瞬間、両目をカッ、と開いた。

…見ちゃった。

ジュリスの視線の先には、仲良く膝枕状態で、日向ぼっこしているベリクリーデとクロティルダ。

ジュリスの顔が、一瞬にして般若になった。

ひっ…。

「…何やってんだ?あいつら」

「…さ、さ、さぁ…」

我ながら、めちゃくちゃ目が泳いでる。

「…ムカつく」

と呟くなり、ジュリスはドシドシと、ベンチに向かって歩いていった。

あぁ…修羅場に巻き込まれてしまう。

正直、もう今すぐ脱兎のごとく逃げ出したかったのだが。

般若顔のジュリスが恐ろしくて、逃げることさえままならなかった。

「…おい」

クロティルダに呼びかける、ジュリスの声は。

まるで、これから決闘でも始めるのかと思うほどだった。