神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…一時間後。

スーパーに行って買い物を済ませた俺は、聖魔騎士団魔導部隊隊舎の中にある、調理室を借りた。

そして、そこで…。

「ジュリス、何してるの?」

ベリクリーデが、興味津々で近寄ってきた。

「バナナジュースだよ…。折角だから、作ろうと思ってな」

売ってるけどさ。市販で、バナナジュース。

だから、それを買ってくるつもりだったんだけど。

まぁ良いか、この際だから作ろうと思って。

バナナジュースの材料を買ってきた次第である。

「…!バナナだ」

ベリクリーデは、スーパーのビニール袋の中に入ったバナナを見つけた。

「ジュリス、これ何処で収穫したの?」

「…買ってきたんだよ。スーパーで…」

気づけベリクリーデ。便利な時代だ。

「成程。市販品を購入することで、自ら生育する手間を省いているんだな」

と、興味津々でこちらを見つめるクロティルダ。

まだいたのか、お前。

冷静に分析しているような顔して、それに気づかなかったお前の馬鹿さ加減よ。

普通気づくだろ。

バナナジュース一杯の為に、何年費やすつもりだったんだよ。

「ジュリス、これシール貼ってある」

「ん?あぁ…三割引きのバナナだったからな」

バナナのパッケージに、三割引きシールが貼ってあった。

これは何も、少しでも安くあげよう…と、思っていた訳ではなく。

「それにこのバナナ、ほくろがいっぱいついてる」

良い着眼点だが、ベリクリーデ。これはほくろではない。

「バナナはよく熟すと、こうして皮に黒い斑点が出来るんだよ」

「ほぇー」

「砂糖を使わずに、バナナの甘さだけでジュースを作りたかったからな」

定価のバナナはまだちょっと青くて、保存して食べる分には、その方が便利なんだろうけど。

今回はすぐに消費するので、出来るだけよく熟れたバナナが欲しかったんだ。

おまけに安いんだから、非常にお買い得。

「まずはこのバナナの皮を剥いて…。これを潰して…っと」

「わーい。美味しそう」

「こら、つまみ食いするな」

お行儀の悪いベリクリーデが、横からバナナを摘んでいた。

「美味しい」

「はいはい」

ちなみに、裏庭に植えられたあのバナナ。

冥界産のバナナだっけ。

あれは、あのまま植えっぱなしにしてある。

植物に罪はないからな。

ルーデュニア聖王国の気候じゃ、多分育たないと思うけど。

つーか、仮に実が出来たとしても、冥界産のバナナなんて、人間が食べて良いのか…?

…ともあれ。

荒く潰したバナナをミキサーに入れ、氷と牛乳を入れて…。

スイッチオン。

「ほぇー」

「これで攪拌しているのか。便利だな」

興味津々のベリクリーデ。そしてクロティルダ。

で、これをグラスに注いで…仕上げにミントを添えて。

あっという間に。

「ほら、出来たぞ」

「やったー」

たったこれだけのことを、お前らは一体何年掛けて行うつもりだったんだ。