神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…しかし、キュレムとルイーシュの心配は杞憂だった。

というのも。

ギリギリ、間に合ったからだ。

俺が現場に駆けつけると、ベリクリーデとクロティルダは、今にも出掛けようとしているところだった。

「おい、お前ら!」

ギリギリセーフ、間一髪間に合った。

「あ、ジュリスだ。ジュリス、やっほー」

やっほーじゃねぇんだよ。

「はぁ、はぁ…。良かった、間に合った…」

「ジュリスも、一緒に行く?」

何?

「何処にだよ?つーかあんた、いつの間に地上に降りてきたんだ?」

ジロッ、とクロティルダを睨むと。

しかしクロティルダは、少しも悪びれていなかった。

どころか、飄々として。

「我が姫に呼ばれたものだからな」

と、抜かしやがった。

畜生、そういうことかよ。

俺がベリクリーデの相手をしてやらなかったから、代わりにこいつを呼んだのか。

でしゃばりめが。

「ベリクリーデ…。お前、何処に行くんだ?バナナジュース飲みに行くんじゃなかったのか」

「うん。バナナジュース飲みたいんだ」

だよな?さっき言ってたよな?

だから俺はてっきり、その辺の自販機とか、近所のスーパーでバナナジュースを買ってきて、とっくに飲んでるものだとおもっ、

「…ん?」

その時、俺は。

裏庭に、見覚えのないものが植えられていることに気づいた。

…。

「…ベリクリーデ、これは何だ?」

「ふぇ?」

「この苗みたいなの…。お前が植えたのか?」

「うん、そうだよ」

何故得意げ?

「お前が手伝ったのか?」

俺は、じろりとクロティルダを睨んだ。

「あぁ、そうだ」

…ちっ。

不法侵入者がよ。勝手に入ってきてんじゃねぇぞ。

おまけに、花か木か知らないが、勝手に敷地内に苗を植えるなんて。

誰の許可を得てやってんだ。

「…で、これ何?」

「バナナだよ」

…は?

「美味しいバナナのなる木。えーと…クロティルダ、なんて名前だっけ?」

「メイカイバナバナバナナだ」

「そう、それ!植えたらバナナが出来るんだって」

「…」

開いた口が塞がらない、とはこのことだった。

俺が唖然としていると、ベリクリーデとクロティルダは。

「何年か後にはバナナが出来るって。だから、今度はぎゅーにゅー取りに行こうと思って」

「これから、野生の牛を捕獲しに行くところだ」

「見つけられると良いね」

「それが終わったら、ジュースを冷やす為の氷を南極に取りに行こう」

「わーい。ひやひやバナナジュース〜」

…。

…こいつら、バナナジュースの為に何年の計画を立ててんの?