神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「あの人達、何年がかりでバナナジュースを作ろうとしてるんでしょうね?」

「さぁ…」

「バナナジュースを飲みたい」←分かる。

「よし、バナナを植えて育てよう!」←理解不能。

…あいつら、市販のバナナオレとか知らないんだろうか。

「ばなな〜♪ばなな〜♪ばなばなのばなな〜♪」

ベリクリーデちゃんは、ご満悦の様子で謎の歌を歌い。

子供用のスコップで、裏庭の地面を掘り始めた。

あそこに穴を開けて、苗を植えるつもりなんだろうか。

もう色々と、ツッコミどころが満載なのだが。

隠れて盗み見してるのがバレたら困るので、「ちょっと待てぃ!」とは言えない。

俺、どうしたら良いんだ?

微笑ましく見守れば良い?

いっそ、もうその方が平穏かもしれない。

…しかし、そうも言っていられなかった。

「それから、バナナジュースに必要なのは…牛乳だな」

「ぎゅーにゅー?」

「ミルクだ。牛の」

「そっか。じゃあ牛さんを捕まえに行こうか」

「そうだな」

おいおいおい。聞き捨てならないぞ今の台詞は。

「あの人達、スーパーに牛乳コーナーがあるのを知らないんですかね」

「…知らないんじゃね…?」

野生(?)の牛を捕まえてきて、牛乳を搾るつもりでいやがる。

世間知らずのベリクリーデちゃんはともかく、天使まで真顔なんだけど。

…天使って意外と馬鹿なんだな。それを初めて知った。

「牛って、何処にいるの?」

「野生種は極めて稀少だな。だが、探せないことはない。長旅になるかもしれないが、ついてきてくれ」

「うん、行く」

ちょ、これはヤバい流れ。

「どうする?ルイーシュ。止めないと」

「何でですか?」

「何でってお前、このままじゃベリクリーデちゃんが、天使と仲良く、野生牛を捕まえる旅に出ちゃうじゃないか!」

「良いんじゃないですか?それはそれで。なんか面白そうですし」

確かに面白そう、と思ってしまった自分がいる。

しかし、面白がってばかりじゃいられないのだ。

だって、よく考えてみろ。

「ベリクリーデちゃんがいなくなったら、ジュリスがどうなると思う?」

「…」

「クロティルダと出掛けたってことが分かったら?その現場を俺もルイーシュも見てたのに、止めなかったって知られたら?」

「…」

「もう一度聞く。…ジュリスがどうなると思う?」

「…面白いことになりそうですね」

「…面白がってんじゃねぇよ…」

お前はいつでも空間魔法で逃げられるから、余裕ぶっこいていられるかもしれないけど。

俺は逃げられないんだからな。

マジギレしたジュリスに命を狙われるなんて、冗談じゃねぇ。

死ぬ。

普段怒らない奴が怒ると怖いんだぞ。