神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

ルイーシュと二人、生け垣に身を潜めて様子を伺う。

視線の先には、ベリクリーデちゃんとクロティルダが。

「こんなところに隠れて…一体どうするつもりなんですか」

と、ルイーシュが小声で聞いてきた。

「どうするも何も…」

「もし、二人が夜にベッドでするあれこれを、この場で始めてしまったら…」

「童貞の妄想かよ…」

ちょっとわくわくしてんじゃねぇぞ。変態。

それと、冗談じゃないんだからな。

そんなことになったら…ジュリス、発狂不可避。

しかし。

二人が、そんなことをおっ始める様子はなく。

それどころか。

「それで、今日はどうしたんだ、姫」

「あのね、私バナナを育てたいの」

と、いう会話が聞こえてきた。

…バナナ?

「今、バナナって言った…?」

「言いましたね。…卑猥な意味でなければ」

「だよな…」

しかし、俺達童貞の卑猥な妄想をよそに。

ベリクリーデもクロティルダも、至って冷静で、至って真面目だった。

不真面目なのは俺達だけ。

「バナナジュース飲みたいんだ」

「成程、それでバナナを育成しようと…」

「クロティルダ、バナナの種持ってる?」

「持ってはいないが…。…そういうことなら、少し待っていてくれ」

と言って、クロティルダはくるりとこちらを振り向いた。

やべぇ、盗み聞きしてるのがバレたか、と思ったが。

そういうことではなかった。

何もないはずのその空間に、クロティルダがスッ、と腕を振るうと。 

「…!あれ、『門』…!」

時空に歪んだ裂け目が出来、冥界に通じる『門』が開いた。

吐月があれほど苦労して開いていた『門』を…こんな簡単に…。

クロティルダは、一人でその裂け目に入っていった。

それを見て、俺は妙に、あいつやっぱり天使なんだな、と思った。

だって、現世と冥界の行き来を、目の前であんな簡単に行うところを見せられたらな。

これまでは、実は天使を騙る変質者じゃないかとも思っていたんだが。

認識を改めるよ。ごめんなクロッティ。

で、そのまま数秒。

再び『門』が開き、そこからクロティルダが戻ってきた。何事もなかったみたいに。

すげーな、おい。自由自在かよ。

「あ、クロティルダ。お帰り」

戻ってきたクロティルダの手には、何やら奇妙なものがあった。

…何だあれ?

「何処行ってたの?」

「メイカイバナバナバナナの苗だ。これを取ってきた」

「おぉー。凄い、さすがクロティルダだ」

「これを植えよう。今植えれば、数年後には収穫出来るはずだ」

「やった〜!」

…。

…ごめん、訂正するわ。

あの天使、やっぱりただのアホの子だった。