神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

聞かなかったことにして、さっさと立ち去ろうとしたのに。

更に、傷が広がっているような気がする。

そして、逃げ出すチャンスを失っている気もする。

つーかあの天使、そんな、ベリクリーデちゃんが呼びかければすぐに聞こえるくらい、近くにいるのか?

それじゃもしかして、姿が見えないだけで、常にベリクリーデちゃんの傍にいるのか…?

すると、ルイーシュもやっぱり、俺と同じことを考えていたようで。

「ストーカーですね」

「あぁ」

間違いない。あいつは天使の皮を被ったストーカーだ。

しかし、ベリクリーデちゃんも、天使も、そんなことは全く気にしていなくて。

「あのね、クロティルダ。手伝って欲しいことがあるの」

「何だ?」

「一緒に来て」

「分かった」

ベリクリーデちゃんは天使を連れて、裏庭方向に進んでいった。

…さぁ、残された俺とルイーシュは。

「…どうする?」

「逃げたいですね。何も聞かなかったことにして」

禿同。

「でも、このことがもし、後でジュリスさんにバレたら…」

「…恐ろしいことになるな」

最近のジュリスは、非常に不機嫌である。

ベリクリーデちゃんと天使が、二人っきりで何をチョメチョメしてるのか知らないが。

もし本当に、人に言えないチョメチョメをしていたとして、それが後でジュリスにバレたら…。

…何で知ってて止めなかったんだ、と俺達がジュリスに半殺しにされるのは、想像に難くない。

自覚ないみたいだけど、ジュリスはベリクリーデちゃん関連のこととなると、普段のおおらかさが空の彼方に吹き飛ぶからな。

ルイーシュはもし何かあっても、得意の空間魔法で異空間に逃げられるから良いとして。

そうすると、俺だけが被害を被る羽目になるので。

こうなったら、全力でルイーシュを巻き込ませてもらうぞ。

すると、ルイーシュもそれを察したのか。

「…それじゃキュレムさん、俺はこれで失礼、」

「待て。一人だけ逃げようったってそうは行かないぞ」

くるりと踵を返したルイーシュの腕を、俺はがっちりと摑んだ。

逃がすか。

「死なば諸共だ。行くぞルイーシュ」

「えぇぇ〜…」

「文句言うんじゃない」

俺は、逃げようとするルイーシュを引き摺るようにして。

ベリクリーデちゃんと、クロティルダという天使の後を追って、裏庭に向かった。