神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…。

俺は、ベリクリーデが開封しているウエハースをじっと見つめた。

「こわくてかわいい♡あつめて都市伝説」…だってさ。

何?怖くて可愛いって。

そんな、キモ可愛い、みたいなノリで。

可愛くデフォルメすれば、何でもかんでも玩具にすれば良いってもんじゃないぞ。

まさか、ベリクリーデがこんなものにハマるとは…。

いや、こんなものって言うのは失礼かもしれないが…。

ベリクリーデ以外に買う人、いるのか?

「ふんふんふーん。次は何かな〜」

うっきうきで、ウエハースを開封するベリクリーデ。

楽しそうなのは良いけども。

…あの時、ちゃんと見てればなぁ。

ベリクリーデが何を購入しようとしてるのか、全然注意を払ってなかった。

焼き鳥のタレを何味にするか、ってことしか考えてなかった。

まさか、都市伝説ウエハースだとは思っていなくて…。

「見てー、ジュリス。やまのけちゃんだよー」

「うぐっ…。そ、そうか…。…良かったな…」

…お前、それが何なのかちゃんと分かってるか?

「ジュリスも一緒に開けよう」

あろうことか、ベリクリーデはそうせがんできた。

は?俺?

「あのね、私、ジュリスと一緒に開けたかったの」

…そういや、さっき部下達が言ってたな。

俺を巻き込む為に、いや、俺と一緒に遊びたいから、わざわざ俺の部屋に運んだんだっけ…。

畜生…。何で俺まで…。

…しかし。

「ねぇねぇ。早く。早く〜」

目をキラキラさせ、好奇心いっぱいの顔でこちらを見つめてくる。

…ズルいだろ。この顔。

「断る。自分の部屋に持って帰れ」なんて言ったら、どんなにショックを受けるか。

あー…。…もう…。

…分かったよ。やりますよ。

「はい、ジュリス。開けよー」

「はいはい…」

渋々受け取り、俺はその未開封ウエハースを見下ろしたが。

親の敵のように睨んでも仕方がないので、早速開封する。

何が出てくるやら。せめて少しでも不気味じゃないヤツを頼む。

しかし。

「うっ…何だこれ…」

「ジュリスは何が出たのー?…あ、りょーめんすくなちゃんだー」

一つの身体に二つの顔が生えた、不気味なキャラクター。

りょーめんすくな…。リョウメンスクナ…。…あれか。

二つの顔は、ムンクみたいに口を大きく開けて、叫んでいるように見えた。

うへぁ…。キモッ…。見てるだけで呪われそう。

「可愛いねー、ジュリス」

「…可愛いか?これ…」

これを可愛いと言ってのける、ベリクリーデの感性よ。

そんな調子で、俺とベリクリーデは、次々とウエハースを開封した。

そりゃあもう、出るわ出るわ。

てけてけくんだの、かんかんさんだの、りあるちゃんだの、きょとーおくんだの、うらえすくちゃんだの。

もう都市伝説でお腹いっぱい。

どんだけ種類があるんだ。

名前をひらがなにすれば強さが薄れると思ったら、大きな間違い。

こえーもんはこえーよ。