神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…一時間後。

俺は、王都セレーナのとある映画館にいた。

…ベリクリーデと、天使クロティルダの三人で。

…何故こんなことに?

大事なことだからもう一度聞きたい。…何故こんなことに?

「わーい。映画館!」

「ほう。これが人の子の娯楽施設か…」

ベリクリーデはともかく、何でこの天使、こんな乗り気なんだ?

天界ってそんなに娯楽がないのか?知らんけど。

「よーし。観よう」

「待て。先に何を観るのか決めてから入場した方がスムーズなのでは?」

「あ、そっかー。…うーん、何を観ようかな…?」

えぇと、今公開されている映画作品の一覧と、今日の上映予定時間を照らし合わせると…。

これから俺達が観ることが出来るのは…選択肢は3作。

1作目は、

「えーと…『エターナル・ラブ・ロマンス2』だって」

タイトルだけで分かる。ゴリッゴリのラブストーリー映画。

作品の紹介ポスターが貼られていたけれど、俳優と女優が熱く抱き締め合い、妖しげな雰囲気を醸し出している。

…やっぱり、恋愛モノだ…間違いない。

タイトルを読んだだけで、正直、「うわぁ…」と思った。

恋愛映画に罪はない。今この場にいるメンツに罪がある。

このメンツで恋愛映画なんて、冗談じゃないぞ。

気まずいにも程がある。色々と。

…それなのに、このアホ天使は真顔で、

「永遠の愛の物語か。興味深いな」

「そっか。じゃあこれにしよっか」

「おい、待て!早まるな!」

「ほぇ?」

さっさと決めてしまおうとする愚か者共を、俺は咄嗟に制止した。

危ないところだった。

「ないだろ。これは一番ないだろ!」

「?ジュリス、何がないの?」

「…いや…それは…」

…選択肢として考慮に値しないだろ、って意味だよ。

何度も言うが、恋愛映画に罪はない。このメンツに罪がある。

「…ほら、これ続編モノだろ?タイトルに、2って書いてあるじゃん」

「!そういえば」

「1を観てなきゃストーリーが分からないかもしれないぞ。だから、この映画はやめよう」

「そうだね。ジュリス偉い」

そっか。お前と天使はアホだな。

この映画が続編モノで、本当に良かった。命拾いしたぞ。

「そうか…。少し観てみたかったんだが、仕方ないな」

と、真顔で納得する天使クロティルダ。

…観てみたかったのかよ。

天使ってアレか。欲求不満なのか?

まぁ何にせよ、この最悪のメンツで恋愛映画という、最高に気まずい展開は防ぐことが出来た。

あとはまぁ…うん…何でも良いよ。