神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「…それで、どうだ?ベリーシュ」

俺は、一番肝心なことをベリーシュに尋ねた。

ベリクリーデはアホの子だから、基本的には直感だけで生きてて、人を疑うということをしないが。

ベリーシュは、聡く、自分の頭でしっかり考えることが出来る。

そのベリーシュの意見を聞きたい。

「あの天使…。何か企んでると思うか?」

嫌でも、勘ぐらずにはいられない。

あの天使がもし、何か企みがあってベリクリーデに近づいてきたのなら。

俺は、今すぐに何かしら対策を打ち出さなければならない。

…しかし、ベリーシュは。

「…何を企んでるのかまでは分からない。でも…彼が悪い人じゃないのは、信じて良いと思う」

…何?

「ベリクリーデはあの人のこと、心の底から信用しきってる。私にも分かるの。あの人と一緒にいる時の、ベリクリーデの安心感が伝わってきて…。…ジュリスと一緒にいる時みたいに、心が温かくなるのが分かる」

「…」

ベリクリーデのみならず、ベリーシュまで。

そんなに…あいつのことが。

「騙されてるんじゃないのか?」

「分からない…。だけど、もし悪意を持って近づいてきたのなら、ベリクリーデはそれを察知すると思う」

「…」

…それは…。…そうかも。

あいつ、直感だけで生きてるだけあって、その直感はめちゃくちゃ頼りになるからな。

もしクロティルダに悪意があるなら、ベリクリーデはそのことを察知しているはずだ。

…多分。

「でも、それだって確認した訳じゃないだろ。奴が天使だって言うなら、ベリクリーデを騙す方法なんて、いくらでもある」

「…うん、そうだよね」

先日の、『ムシ』の一件だってそう。

それに、アーリヤット皇国にいた、ハクロとコクロ…。

ミカエルとラファエルだっけか。

あいつらは、催眠魔法だの幻覚魔法だの、規格外の魔法ばっか使いやがってさ。

危うく俺もシュニィ達も、ベリクリーデや、シルナ・エインリーのことを忘れてしまうところだった。

クロティルダが本当に天使だってんなら、奴はミカエルとラファエルの仲間ってことになる。

ミカエルとラファエルが失敗したから、今度は奴が、何かを企んで地上に降りてきた。

そして、ベリクリーデに接触して、ベリクリーデを利用しようとしている…。

…俺としては、そう考えるのが一番辻褄が合う。

それに、突然ベリクリーデのもとに天使が現れたとなると、普通そう考えるのが当たり前じゃないか。

ベリクリーデの中にいるのは、奴らの親玉である聖神ルデスなのだから。

…やっぱり、考えれば考えるほど、何か企んでるようにしか思えない。

もっと問い詰めてやれば良かった。あの天使。

「騙されてるんだよ、ベリクリーデは…。アホだから…」

「…そうなのかな。私は、あの人を信じても良いんじゃないかと思ってるけど」

「…ベリーシュ、お前まで…」

お前なら、もうちょっと警戒してくれると思ってたんだが?